一般に「トレンド」を日本語で表現すると「趨勢」と訳されます。マーケティングの視点からは「多くの人たちの関心を集めている事象の動向といった意味が含まれます。現時点での一時的な事象である「流行」とは異なり、「トレンド」は長期的に先を見据えた「様々な事象の根底に通底する動向」として捉えることができます。「根底に通底する動向」には、共通の意味があり、あるいは、意味に対する共感があるともいえます。
1.意味に新たな意味づけする
知識(知識(形式知)、暗黙知)には、意味づけがなされなければ何の役にも立ちません。何事に対しても、それが自分にとってどんな意味があるかを意味づけをしなければ、受動的に見たり聞いたりするだけでは意味を持ちません。
トレンドも同様です。経営を担う経営者が、あるいは、様々な業務を担う一人ひとりが、夫々の役割を担うために、トレンドに対して能動的に意味づけをして行動することで、組織全体として機能します。主体となって行動する人が、その人の主体性によって、トレンドに能動的に意味を持たせることで意味がでてくるのです。
1.1. トレンドに対して能動的に意味づけをする
能動的に意味づけするということは、どういうことなのでしょうか? それは、その対象とするものの現在の在り様に対して問題を感じるということであり、かつ、新たな在り様を描いてトランスフォーメーションしなければならないという意識を持つことです。
単なる数字の羅列としてのトレンドには意味がなく、①対象とその論点、②今の在り様(数字の傾向)、③将来の在り様、④トランスフォーメーション(変革)という構図が描けて、初めて能動的にトレンドに意味づけされたということになります。トレンドを議論して深掘りするということは①②③④を深掘りして能動的に意味づけするということになります。
2.トレンドを構造化して戦略を構想する
2.1. トレンドの構造
トレンドに対してどのような策を打って対処すべきか? 能動的に意味づけをすることによって、対象と論点が明確になり、トランスフォーメーションが定義されます。そして、トランスフォーメーションの対象を軸にトレンドを構造化することで、組織の中で戦略的に対処していくことが可能になります。
具体的には、トランスフォーメーションの対象のメタレイヤーによって、トレンドを L-A:外部環境、L-B:人間の活動、L-C:人間の実存と関係性 で分類し構造化することができます。
2.2. トレンドの分類
以下に、当社が独自に構造化したトレンドの分類表を示します。

3.トレンドを意味づけるインサイト
トレンドに対して能動的に意味づけをして行動するといっても、そこにはビジネスインサイトが必要です。一般に「インサイト」を日本語で表現すると「洞察」と訳されます。しかし、これでは、何に対して、どのように導き出された「インサイト」(洞察)なのか判然としません。
当社では、インサイトを「明示されていなかった事象・構造・真因に対して、“新たな見方”や“本質的なつながり”を見出す知的発見である」と定義します。
3.1. インサイトの特性
トレンドの意味づけ文脈から、インサイトには下記に示す特性があるといえます。
- 既知の枠組みでは捉えきれない 構造変容をもたらす知である
- 意味の再構成を含み、知の転換点となる
- 形式知でも暗黙知でもない発見的な知である
3.2. インサイトの類型
以下に、当社が独自に抽出したインサイトの類型を示します。

この類型が示すように、インサイトは、単一の要素から創出されるのではなく、様々な要素が複合して、かつ、様々に創出されたインサイトが相互に作用して創出されるものです。
4.組織能力の発揮
トレンドに対して能動的に意味づけるということは、組織能力の発揮でもあります。①対象とその論点、②今の在り様(数字の傾向)、③将来の在り様、④トランスフォーメーション(変革)という構図は『他社に真似のできない希少性を構築し、その有用性によって社会に対する影響力を確立する』ことに他なりません。
サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一