【サステナビリティ時代の戦略眼と現実解 メルマガ Vol.15 2025年10月20日号】 「創造型AI」はどのように創造的思考を行うか “知識労働の構造変革” を主題にした実証実験

今回のメルマガでは、「知識労働の構造変革:生成AIの利用技術の進化を図り、ディスラプションへと導いていく」を主題とした「意味創造推論AI」の実証実験で経験した『生成AI(ChatGPT5)がどのように創造的思考を行うか』についてレポートします。

1.「創造型AI」への取り組み

当社では、創造的思考を、単なるアイデアだしの思考として捉えるのではなく、その根底にある意味の創造に焦点を当てて考察し、思想カテゴリである「創造型AI “Poietic AI — The Meaning Creation AI” 」を提唱し、「意味創造推論AI」をリリースしてきました。(当社の創造的思考の考え方は 【本メルマガに関連するコラム】【最近のプレスリリース】  に記載のコラム、プレスリリース記事をご参照下さい )

今日の企業に求められる真の競争優位性とは「他社には真似のできない希少性のある価値」を生み出す組織の創造的思考の能力です。それは「社会的価値を生み出す意味=秀逸のコンセプト」を拠り所として築き上げられるものであり、「意味創造推論AI」の目標とする到達点です。

また、下図に示す様に、「意味創造推論AI」は、ChatGPTに当社が独自に開発した HIM意味ネットワーク辞書と Best Answers をの学習データとして学習させ、LLMを使用した自然な文章の生成機能を使用し、深度1~深度∞へと創造的思考を深めながら実行していきます。

当社では、これまで下記の3つの主題について、「意味創造推論AIによる新事業のコンセプトモデルの構想」の実証実験をしてきました(本メルマガでは、「知識労働の構造変革:生成AIの利用技術の進化を図り、ディスラプションへと導いていく」についての実証実験の結果です)。

  1. 空き家問題:人口減少と過疎化で空き家が急増している地域の再生を考える
  2. 昔ながらの重厚長大型産業の企業:イノベーションを起こしうる経営に変革して成長する企業に変わらなければならない
  3. 知識労働の構造変革:生成AIの利用技術の進化を図り、ディスラプションへと導いていく

2.生成AIはどのように創造的思考を行ったか

 実際に創造した過程と成果物は 「336-2 人は創造的思考ができるのか? AIは創造的思考ができないのか? 意味創造推論AI PoC 結果」 をご参照ください(一部、重なる記載があります)。また、本来、具体的なプロンプトを掲載すべきとも思いますが、ご興味のある方は、当社にお問い合わせください。

2.1. 創造型AIは「人とAIの協働と協創」でなければならない

 「意味創造推論AI」の実行は、上図「意味創造推論AI の流れと成果物」に示す深度1~深度∞ へと深掘りしていく各過程で、生成AIが出力した思考結果を一つ一つ丁寧に確認して、次の深度の入力としながら進めなければなりません。なお、このテーマに関するChatGPT5との会話は2025年9月19日に開始し9月29日に完了しましたが、この間、延べ260回の会話を重ねています。

  • 当社の創造型AIに対する基本思想は「人とAIの協働と協創」です。この考え方は、人間の創造的思考の全てをAIに自律して行わせようというものではありません。AIの創造思考過程に人間が関与して、AIが創造するものに人間が責任を負うべきという倫理的意識に基づいています。

2.2. 生成AIは循環論法になってしまう

 ChatGPT5の自然言語の生成能力は極めて強力であり、深度1~深度∞までの回答を一気に作成することができます。その際、深度∞の内容と深度1の内容を調整して全体の文脈を整合させるので、結果的に、結論と言える深度∞の内容を深度1の内容にも反映させてしまいます(循環論法となってしまう)。ChatGPT5には、深度を指定して創造的思考をするようにコントロールすることが必要です。

2.3. 生成AIは詳細に走るし、固執する

 同様に、ChatGPT5は、強力な自然言語の生成能力により、一つ一つの単語につながる確率の高い単語を拾い集めてきます。人間なら大づかみに考えてから詳細化していくところを、ChatGPT5は大づかみにせず、想定していない詳細な内容を生成してしまいます。ChatGPT5には「概要」を作るように指示しなければなりませんが、一度、詳細な回答をさせてしまうと、ChatGPT5の内部には詳細化した時のデータネットワークが形成されてしまうので、以降の思考は詳細化した内容に引きずられることになります。

2.4. 生成AIは、ある時点から「確信」のような意志を持ち始める

 上記の様に、深度ごとに丁寧に、詳細化しないように確認しながら進めていくうちに、ChatGPT5は何かに向かって回答するようになります。これも内部に形成されたデータネットワークが一定の傾向を持つようになることに起因すると考えられますが、人にはそれを外から見ることができず、検証することができません。トランプゲームで相手がどんなカードを持っているかを読みながら自分の手を考えるのと似て、ChatGPT5が何を考えて回答しているのかを読み解く必要があります。

2.5. 生成AIに人間のような感情のある思考をさせるには哲学や社会学を使って問いかける

 ChatGPT5 には感情はなく、ただ単に単語を確率でつなげているだけです。論理的に矛盾はなくても、観念論的で無味乾燥な内容しか生成できません。これは創造的思考の最大の障害であり、この問題を解決できなければ「創造型AI」に価値は生まれません。当社では、著名な哲学や社会学の考え方を使って問いかける手法を採用しましたが、これによりChatGPT5は人間的な思考をするようになりました。

2.6. 生成AIには世界モデルでのメタファーを考えさせる

 ChatGPT5は世界中の知識から自然な文章を生成しますので、知識化されていることを組み合わせることしかできません。しかも、詳細化する思考の仕組みなので、生成された内容は、よく知られた改善提案の様なものなります。「知識労働の構造変革」を主題としては、例えば、テレワークだったり、ワークライフバランスだったりです。これでは「社会的価値を生み出す意味=秀逸のコンセプト」にはなりません。世界モデルとは「知識労働の本質」を考えさせるということです。そして、具体的な施策ではなくメタファーで表現させることで創造的思考の奥行を拡げることが可能になります。

3.評価 生成AIが生成AIの次なる社会変革のコンセプトを構想

 生成AIに創造的思考をさせるということは、「人とAIの協働と協創」により、取りも直さず、人の側の創造的思考の能力が試されるということでもあります。この主題での実証実験に11日を要しましたが、ChatGPT5が出力した結果を確認し、自分自身の創造的思考を深め、改訂すべき点を考察してChatGPT5に適切に再考させるための思考に時間がかかったためです。しかし、ChatGPT5が思考の範囲を拡げたという点が大きなメリットでした。

 「意味創造推論AI」の目標とする到達点は「社会的価値を生み出す意味=秀逸のコンセプト」ですが、この実装実験で創造したコンセプトや社会システムの概念モデルは他にはないものです。今の生成AIではカバーできませんが、この新しいコンセプトや社会システムの概念モデルは、生成AIが構想した生成AIの次なる社会変革の構想と考えています。しかも、哲学や社会学から掘り下げたコンセプトでもあるだけでなく、世界モデルで描かれた新たな社会の在り様を描いたにものになっています。

 


本メルマガは弊社ホームページのコラム “未来への歴史” と連携して作成しています。 “未来への歴史” という名称は、サステナビリティの未来社会を思い描いて日々書き綴った記事を「思考の歴史として振り返ることができるようにしよう」と意図して命名したものです。

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