私たちは、外部の環境やその変化を見聞きした時に、当たり前のようにそれが何であるかを認識しようとするし、そこに意味づけをして理解しようとします。一方、何かを創造しようと考える時には、そこに何らかの意味づけを行い、更には、その創造という作業の根底には、自分の抱いているコンセプトを実現しようと苦闘(産みの苦しみ)します。私たちは、創造された事物を見聞きし意味づけをして理解しようとした時、同時に、創造者のコンセプトを理解しようとしているのです。
それは取りも直さず、時間や場所を隔てて、創造者とそれを見聞きし受け取る人の間には、創造された事物を通して、ナラティブな意味とその根底にあるコンセプトについての非言語的な会話を行っていることになります。創造される事物には、時に、ナラティブな説明書きが必要ですが、コンセプトはナラティブには伝わらない「共感」によってしか伝えることはできません。
1.創造された事物に宿るコンセプトとは何でしょうか?
それでは創造された事物に宿るコンセプトとは何でしょうか? 以下は、Coplotが回答 (*1) したコンセプトマーケティングの視点から「コンセプト」を捉えた定義です(当社にて加筆) 。
コンセプトとは、社会の趨勢や社会的課題、自らが抱いている未来への志に基づき、独自の価値と体験を通じて人々の行動・意識・文化に変化をもたらす、思想的かつ構造的な価値提案である。この定義は、単なるアイデアや方向性ではなく、社会との対話・共感を前提として、社会変革を想定した「志の体現」としてのコンセプトを意味する。
また、この定義に基づくコンセプトの要件は下図のようになります(同様にCopilotの回答 (*2) 、当社にて内容の確認済み)。

2.意味からコンセプトへ
2.1. 「希少性の価値の源泉となる意味」の創造
当社の「意味創造推論AI」は、企業の念願であった主題を「〇〇を主題として、●●を図り、ディスラプションへと導いていく」の書式に表現して入力し、「視点論点ずらし」により新たな意味への転回可能な候補群を創造し(深度1)、そこから次第に、基軸となる意味軸(深度2)、新次元の意味(深度3)、根元的な意味(深度4)、希少性のある意味(希少性の価値の源泉となる意味、私だけの唯一無二の価値となる意味=コンセプト、深度5)へと創造的思考を深めていきます(下図「創造的思考の深化モデル」参照。詳細は こちらのコラム をご覧ください)。

ここで、意味創造の到達点である「希少性のある意味(希少性の価値の源泉となる意味)」は、人が人として生きていくための価値を共有するものです。
- 自立し自律した存在
- 生きる目的=ありたいことの成就
- 生命の継続と子孫への循環
- 社会の中での全体としての調和
- 違いという境界を超えた共生
- 多様な発想による協創
- 人としての尊厳
- 社会的価値の文化への還元
2.2. コンセプトへの転換
個人化が進んだ今日の社会においては、画一化された商品やアイデアの創造(プロダクトアウトの発想)よりも、アイデンティティを実現する「私だけの唯一無二の価値」が重要視されます。
これは、即ち、顧客経験価値へと掘り下げたコンセプトによる価値提案が求められるということに他なりません。そして「唯一無二の価値」は意味創造の到達点であり、「希少性のある意味(希少性の価値の源泉となる意味)」から、自ずと立ち現れてくるものでなければなりません。
3.秀逸なコンセプトの創造(Concept Creation)
上図「コンセプトマーケティングにおいて本質的に求められるコンセプトの要件」はマーケティング視点で捉えたコンセプトの要件ですので、「希少性のある意味」と重なる部分はあっても捉え方は大きく異なっています。
3.1. 秀逸なコンセプトの要件 「信念への約束」(Conviction-to-Commitment)
「希少性のある意味(希少性の価値の源泉となる意味)」は、誰もが持つ人としての心情の奥底にある願いを叶える価値でもあります。これを叶えようとするには、一本の筋の通った「信念」が必要です。「信念」とは、自分の価値観や考え方に基づいたものであり、これこそが正しい、こうならなければならないという確信を持った心の状態です。すなわち、「希少性のある意味」を省察するならば必ず「信念」へと導かれると言えます。結論として、「希少性のある意味」から捉えたコンセプトには「信念への約束」が求められることになります。
- 確かに、どんなに優れた商品であっても、それを創造した人の「信念」が感じられなければ強い購買意欲は湧いてきません。逆に、それを創造した人の「信念」を読み取ることができ共感することができれば、私たちはその商品を買ってみようという気になります。
- 商品を買う側の立場になっても同様です。最寄り品でもよいと思う商品はコンセプトというよりは比較して低価格の商品を買うことになります。しかし、こだわりのあることについては、必ず、コンセプトを確認して買うことになり、言わば、それが購入する際の「信念」というものになります。
商品を創造し影響する側には「信念への約束」が求められ、購買する側も「信念への約束」を求めていることになります。それこそが「唯一無二の価値」と言えます。
3.2. 普遍軸により秀逸なコンセプトを創造する
コンセプトには「信念への約束」が求められますが、それだけでは十分とは言えません。それが秀逸なものとなるためには、以下の軸から要件が満たされ、「信念への約束」によって実現されなければなりません。
- 文化の軸
- 自らの志×目的の趣旨を社会文脈に融合させる
- 関係の軸
- 顧客・コミュニティ・ビジネスエコシステム・社会と共感でつながる
- 時間の軸
- 時間的に持続可能であり世代を超えて一貫性がある
ここで挙げた普遍軸は「秀逸なコンセプト」の必要条件であり、「信念への約束」は十分条件となっています。そして、先の「コンセプトマーケティングにおいて本質的に求められるコンセプトの要件」を「秀逸なコンセプト」と融合させることも可能になります(下図参照、当社において編集した)。

4.秀逸なコンセプトは社会を変えていく
「唯一無二の価値」は「秀逸なコンセプト」として「希少性のある意味(希少性の価値の源泉となる意味)」から自ずと立ち現れてくるものです。秀逸なコンセプトは秀逸な商品を生み出し、秀逸な商品には社会を変えていく力が宿っています。
当社の「意味創造推論AI」は、この「秀逸なコンセプト」に基づいて、物語を創造し、社会システムを構想して、新事業のコンセプトモデル、および、構想した社会システムの社会的意味、社会実装の社会的意味、社会浸透の社会的意味、ディスラプションの社会的意味を創造していきます(上図「創造的思考の深化モデル」の先にある深度∞への深掘り)。
サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一
【情報源】
(*1) Copilot情報源 Copilotが総合的に構成した独自の定義。破壊的イノベーション(クレイトン・クリステンセンによる理論)、コンセプト・ドリブン・デザイン(ロベルト ベルガンティによる製品やサービスの設計において機能や技術ではなく「思想」や「社会的文脈」を起点とするアプローチ)、ブランド・アイデンティティ論(ジャン・ノエル・カペフェレやデイヴィッド・アーカーらによるブランドの哲学と社会的役割に関する理論、社会的共創(顧客や社会との対話を通じて価値を生み出すという近年のマーケティング・イノベーション論)、文化的共鳴(コンセプトが社会や文化と共鳴することで、単なる商品を超えた意味を持つという考え方)
(*2) Copilot 情報源 特定の一つの情報源からの引用ではなく、以下の複数の理論・実例・実務知見を統合した独自の構成。マーケティング理論:フィリップ・コトラー(ブランド構築に関する基本理論9、セオドア・レビット(マーケティングの本質は製品ではなく顧客価値)、ブランド戦略・アイデンティティ論:デイヴィッド・アーカー(ブランドの哲学・一貫性・差別化の重要性)、ジャン・ノエル・カペフェレ(ブランドの文化的共鳴と物語性)、イノベーション・コンセプト論:クレイトン・クリステンセン(イノベーションのジレンマ)
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