社会発展のシナリオ

すべての人間は、生れながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。人間は、理性と良心とを授けられており、互いに同胞の精神をもって行動しなければならない。
世界人権宣言 第一条

 人は、誰もが幸福に過ごしたいと願って生きています。人は、人と人がお互いを尊重し合い、相互に協力しあって結びついていくことで社会の発展を実現し自らも成長していく存在でもあります。
 誰もが幸福に過ごしたいと願い社会と関わり合って経済活動をすることによって生きていくためには、「働きがいのある人間らしい仕事」が必要になります。

変革したいという心を動かす原動力

 変革したいという心を動かす原動力は、一言でいえば、誰もが抱いている「幸福な人生を過ごしたい(人生を豊かにしたい)」という思いです。

  1. 時間、空間を有効に生かしたい
  2. 人は無意識のうちに、居心地の良い場所、働きやすい場所、自分の時間に合わせた時間帯に仕事をしたいなどを強く願望しているものです。もし、それが実現できたらリラックスできるのにとか、効率よく働けるのにとか、そして人生を豊かに過ごせるのにとか思っています。

  3. 生きていく上で必須な利便性を向上したい
  4. 人は「人と人がお互いを尊重し合い、相互に協力しあって結びついていくことで、社会の発展を実現し、自らも成長していく」ことによって生かされ生きています。この際、上記1.で感じている不便を取り除きたい、それによって便利に過ごしたいと願うものです。結局、根源的には人は日々の生活の中で無意識にせよ「移動」や「伝達・意思疎通」の不便さを身に染みて感じており、常にその利便性を向上させたいと願っているものです。

  5. 個が人生を豊かにするために根元的にあるべきものとして良くしていきたい
  6. 人は人として存在したいと願っているものです。そこで、誰もが持つ人の普遍的な権利(人権)を持っていると主張し、もし、それが満足に得られないならば社会システムに強く要求しすることになります。また、地球上で安心して暮らしていけるために生態系・地球環境の保護や保全を求め、更には、社会に対して人との関係をより良くするために社会共通資本の向上を求めて生きています。

  7. 人生を裕福にする価値を獲得したい
  8. 上記1. 2. 3. の生きていく上での根源的な願いを叶えたいと求めつつ、人生を裕福に過ごしていくための経済的価値を求めて生きているものです。例えば、消費財としての資源(使用(消費)によって生じる価値)や将来の生活不安に備えるためのお金を求めて生きています。また、財産(所有するゆえに獲得される価値)を少しでも獲得したいと願って生きています。例えば、贅沢に暮らしていくためのお金やブランド品、名声や地位を求めて生きています。

  9. 自己の存在意義を獲得したい
  10. 人は裕福になりさえすれば幸福になれるというものではありません。人としてこんな人間になりたい、人に愛される人間になりたい、人に頼られる人間になりたいなど、将来の状態としての期待価値を実現したいと願って生きています。また、人は「働く」という経済活動を通して社会と関わって生きているものです。そこでは、誰もが「働きがいのある人間らしい仕事がしたい」と願っており、その根源には、一市民として自立し、社会の役に立ちたいという思いを実現するために、自ら内発的に自律して行動できるようになりたいと理想(自己の存在意義)を掲げて生きているのです。

持続可能な社会の発展のシナリオ

誰もが抱いている「幸福な人生を過ごしたい(人生を豊かにしたい)」という願望を原動力として描かれる社会変革のシナリオは以下のようになります。ここに掲げる【このようにして】のシナリオは「経済発展の世界観」「経済合理性」の思考の延長上に類推されるシナリオでしかありません。しかし、ここに「幸福な人生を過ごしたい(人生を豊かにしたい)」という願望を組み込んだ社会変革のシナリオを描くと【このようになる】に示されたシナリオへと変貌していきます。この「幸福な人生を過ごしたい(人生を豊かにしたい)」という願望をどのように組み込んでいくかこそが『社会変革のシナリオ』の要諦となるものです。

【このようにして】 現在時点での「経済発展の世界観」「経済合理性」の延長上として描かれる方向性としては

  1. 社会秩序の変革
  2. 社会秩序の変革の方向性としては、例えば、(1) 脱炭素社会化・省エネ社会化・再生エネ社会化・循環社会化、(2) 市場の原理で競争し弱肉強食で生きていく社会ではなく、ビジネスエコシステム(生態系)として弱いものも環境に適応しながら生きていける社会、(3) 大衆社会から個の社会化、(4) 人工知能とロボットなどの技術革新が実現する社会などを挙げることができます。

  3. 社会システムの変革
  4. 社会システムの変革の方向性としては、例えば、(1) 社会環境や自然環境を保護し保全していくシステムとして、脱炭素化システム、地球環境にやさしいシステム、スマート化システム、仮想技術によるリアルな社会活動の代替となるシステム、いつでもどこでも、どこからでもすぐにアクセスし活用できるシステムなど、(2)
    経済システムの変革として、市場原理の下で生み出された新たな経済成長(新たな投資のスキームによる雇用の創出、限界費用ゼロ社会化など)、人財と消費財の社会共有化(社会共通資本化、ギグエコノミー、シェアリングエコノミーなど、持続可能な経済システム化(サーキュラーエコノミー、グリーンエコノミーなど)を挙げることができます。

  5. プラットフォームの変革
  6. プラットフォームの変革の方向性としては、例えば、(1) 時間と場所の制約からの解放(自動運転の技術革新によるモビリティの変革、通信や非接触化や自働化の技術革新によるリモート化)、(2) サイバーフィジカル(サイバーとリアルの融合化など)、(3) 社会のオープン化(コミュニケーションのソフトウェア面での技術革新による情報共有化、知識共有化など)、(4) 社会インフラの革新(IoTなどに代表される情報通信ネットワークのハードウェア面での技術革新による、サプライチェーンや箱ものインフラの変革など)を挙げることができます。

  7. プロダクトの変革
  8. 技術が切り拓く未来像の向性としては、例えば、(1) 夫々のプロダクト、(2) 夫々の要素技術などを挙げることができます。これはビジネス領域の夫々に存在するもの、また、それらを融合してできるものなど、夫々の分野で多岐にわたり存在しています。

【このようになる】 「幸福な人生を過ごしたい(人生を豊かにしたい)」という願望を組み込んだ方向性としては、

  1. 社会の発展
  2. 社会変革の向性としては、例えば、(1) Well beingの実現、(2) 心豊かに暮らせる社会制度の発展(自由と平等、民主主義を重視する社会である、人権重視の社会である、経済合理性(効率重視)の社会から多様性と包摂性の社会となるなど)、(3) QOL(“Quality of Life” 健康に暮らしたい、安全安心に暮らしたい、ワークライフバランス)の実現を挙げることができます。

  3. 経済の発展
  4. 経済発展の向性としては、例えば、(1) 生産性向上(人は指示されたことをその通りに行うよりも内発的に行動した方が創造的になり生産性が高まる)、(2) 社会コストの構造変革(脱炭素化や環境にやさしい事業にはコストがかかる。箱もの投資は後々に維持費もかかる。こうした社会全体が負担する費用構造を見直して、新たな経済成長につながる投資を考える)、(3) 労働分配の構造変革(自働化技術に対する投資の方向性として、労働集約型、知識集約型業務、エッセンシャルワークの負担軽減(コスト低減)を図り、人がより創造的に働けるようにして生産性を高めて労働分配率を高める)の実現を挙げることができます。

  5. 人の成長
  6. 人の成長の向性としては、例えば、(1) 個の求める豊かさの追求(自己の確立、自己の実現)、(2) 組織の発展(組織能力の向上、即ち、問題発見能力の向上、問題解決能力の向上)、(3) チームワークの向上、(4) 社会関係資本の充実(多様なコミュニティの生成、コミュニティによる活動の実践、連携の場の実現)を挙げることができます。

  7. 社会問題とその解決
  8. 社会問題とその解決の向性としては、例えば、(1) 様々に連鎖する社会問題の解決(複合的社会的課題の解決の連携、重層的な社会的課題の解決)の実現を挙げることができます。社会問題は様々に絡み合って生じており、個々の事業での対応により解決する以上に、様々な事業に関わる人達や実生活の中で色々な問題に直面して生きている多様な人達が協働して、社会問題の全体像を捉えて大局観を持って解決していくことが必要となります。

  9. 技術の発展
  10. 技術の発展の向性としては、例えば、(1) さらに便利な社会になっていく、(2) 社会的課題を引き起こしてきた技術のブレークスルーの実現を挙げることができます。これはビジネス領域の夫々に存在するもの、また、それらを融合してできるものなど、夫々の分野で多岐にわたり実現されていくものです。

 

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【用語の定義】

Well Being

 “Well Being” を直訳すると「善き存在」となります。当初、この言葉は、WHO憲章において「健康」の文脈で用いられてきましたが、健康の文脈だけでなく「幸福」の文脈の中でも用いられるようになってきました。当社でもこの「幸福」の文脈で “Well Being” を用いています。
 尚、1947年に採択されたWHO憲章では、前文において「健康」を次のように定義しています。「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。(日本WHO協会訳)」

自立と自律

 「自立」と「自律」という言葉には多義性があり、一概に定義することはできません。そこで、当社では、①経済的に自立し、②様々な権利(人権)がその人に確保されて、③個人の自由意志が形成され認識されて初めて「自立」と言えると定義します。そして、こうした自立した個人が、④内発的に意見を表明し、⑤他者に対して提案し、⑥お互いの意見の相違を受け容れて、⑦自ら調整して実現していけるようになるのが「自律」していることの定義としています。
 

【参考文献】

  1. WHO(世界保健機関) 健康の定義:https://japan-who.or.jp/about/who-what/identification-health/