SX 支援

当社では、サステナビリティ・トランスフォーメーションを以下のように定義しています。

サステナビリティ・トランスフォーメーションとは、これまでの社会システムを、自然資源の持続可能な循環型の利用、再生可能エネルギーへの移行、社会的責任を統合した経済モデル、持続可能な消費パターンへのシフト、ガバナンスの実施等、環境保全、経済成長、社会的公正を統合した新しい社会システムへと変革していくこと

 

1.SX “Sustainability Transformation” の3つの論点

ここでは、以下の3つの論点から SX “Sustainability Transformation” について整理することにします。

1.1. そもそも、 「サステナビリティ・トランスフォーメーション」とは何か?

21世紀の今日、人々の関心は、地球温暖化や自然環境破壊といった社会問題、人権の尊重に向けられています。どの企業においても、近代化の時代、とりわけ、高度経済成長期の時のようにひたすら経済成長を追い求めていれば良いというのでなく、本業の事業そのものにおいても、地球温暖化、自然環境破壊、人権に配慮して、持続可能な社会の発展につながっていく、まさに、「社会的価値の創造」に取り組んでいかなければならなくなってきました。こうした経営戦略としての取組みが「SX “Sustainability Transformation” サステナビリティ・トランスフォーメーション」と言われているものです。

なお、当社では、この変革の過程を、2016年よりサステナブル・サイクルとして提唱しホームページに掲載してきました。また、ブルントラント報告の詳細につきましては サステナビリティ のページを参照して下さい。

1.2. そもそも 、「サステナビリティ・トランスフォーメーション」と言うけれども何をしたら良いのか?

下図は当社が描いてきた「社会発展の方向性」を24個に類型化したものについて、「何が実現したら、何が実現できるか」の相関性を分析したものです。この分析では、多様性が重視される今日の方向性が十分条件としても必要条件としても重要であることが描きだされています。また、最近では、生成AIの社会に対するインパクトが注目され、AIが人の仕事を奪うのではと危惧されていますが、創造的仕事を創造することの重要性も焙りだされています。この二つの社会発展の方向性は相乗的に必要条件であり十分条件でもあると言えます。

1.3. そもそも、 「サステナビリティ・トランスフォーメーション」によって何が変わるのか?

上図の「社会発展の方向性」は、持続可能な発展をしていく社会の中で、「私たちが体験することはどうでありたいのか」「私たちはそこから何を感じ、考え、行動して生きていくのか(QOLやWell-Being)」「創造的な仕事を創造し、そこからどのような働き甲斐のある人間らしい仕事(Decent Work)を社会の中に創出していけるのか」といった視点からビジネスを捉え直し、マネジメントやマーケティングの仕組みを構築しなければならなくなってきたということを示しています。

2.企業が対処すべき経営課題とマテリアリティ

下図は、経営環境の変化から組織としての重要課題(マテリアリティ)を導出していく過程を模式化して示したものです。

企業は、経営環境の変化が起きていないか、常に、周りの状況を監視しています。しかし、漠然と見ているだけでは監視にはなりません。そのためには、まずは、経営に関わり捉えるべき変化するものは何か(変化の発生要因)を明確にしておくことが大事です。また、変化がどのような状況にあるものなのか、自社や他社がその状況に対して相対的にどのような立ち位置にあるかを把握して経営課題として対処すべきか変化であるのか判断します。

それは経営リスクの認識にもつながり、その認識された経営リスクに対してどのように取り組んでいけばよいのか、短期的には目の前にあるリスクに対処する(リスクマネジメントとして取り組む)のか、長期的な取組みとして抜本的解決策としてサステナビリティイ・ノベーションを構想して自社の本業である事業を変革(ビジネス・トランスフォーメーション)していくのかといったことを判断して事業戦略を見直していかなければなりません。

2.1.経営リスクの認識

下図は当社がサステナビリティの視点から想定している「経営リスク発生からマテリアリティ生成に向かう流れ(リスク対策からビジネス・トランスフォーメーションへ)」と「認識すべき経営リスクの類型」です。多岐にわたり細かく記載していますが、その時々の状況に応じた思いつきではなく、全体像から戦略的に経営リスクを捉えていくことが大事です。

社会からの要請としてサステナビリティへの取組みが求められるようになるにつれ、企業に対して、特に、ESGの視点からの情報開示への要求も強くなってきています。この際、重要になるのが、①サステナビリティに関連してどのようなリスクを認識しているか、②自社の立ち位置から対処すべき経営課題を明確に開示し、③組織としての重要課題(マテリアリティ)として取り組んでいるかという、3点です。

上図で認識された経営リスクは、対処すべき経営課題として開示され、サステナビリティへの取り組みとして、リスクマネジメント(リスクの回避/分離/移転/保有、損害の予防/軽減/拡大阻止/再発防止施策)とビジネス・トランスフォーメーションの両面から、サステナビリティの実現に向けた経営戦略を構想していくことになります。

2.2.経営リスクからマテリアリティへの戦略転換

経営リスクは経営環境の変化に伴い想定されるものです。そして、直感的に、リスク対応、あるいは、リスク自体をビジネスチャンス(機会)と捉えた発想で必要な施策が構想されます。しかし、その一方で、多くの企業では、本業である事業をサステナビリティへの取り組みとしてその企業のマテリアリティ(重要経営課題)として掲げています。これでは、経営環境の変化、経営リスク、対処すべき経営課題、マテリアリティの間に連環性が失われてしまいます。

下図「戦略転換の構図」では、リスクマネジメントの発想からビジネス・トランスフォーメーションの発想への戦略転換(転回)の様子を示しています。リスクマネジメントの段階では変化への適応という短期的保守的施策が優先されます(変化への適応型の組織システムA)。一方、戦略転換後のビジネス・トランスフォーメーションの段階では、ビジョンが組織を動かす原動力(目的論的理由)となって自ら変化そのものを創出する、すなわち、変化を先取りする取り組み(マテリアリティに相当)が構想され組織の中で展開されていきます(新たな社会価値創造型の組織システムB)。

組織システムAは戦略転換を経て組織システムBに移行(社会的要請、ステークホルダーとのコミュニケーション、経営者のダイナミック・ケイパビリティの作用による)しますが、一旦、組織システムBが駆動されると、時間の経過に伴い自ずと組織システムAが起動し、そこからまた組織システムBが駆動されていく価値創造の回帰的ダイナミズムへとつながっていきます。

価値創造と回帰ダイナミズムと破壊的イノベーションの関係については「【追補1】経営リスクからマテリアリティへの戦略転換と破壊的イノベーション」をご参照下さい

3.SDGsに向けて、どのように取り組めば良いのか

上記のリスクマネジメント(リスクの回避/分離/移転/保有、損害の予防/軽減/拡大阻止/再発防止施策)とビジネス・トランスフォーメーションへの取り組みは、SDGsへの戦略的な取り組みへと結びついていかなければなりません。

ところで、SDGsのそれぞれの目標は単独で実現できるものではないと言われています。そもそも、社会問題は複合した要因から生じてくるものであり、その解決も単独の施策を講じることによって可能であると言うことはできません。企業の本業を通してのSDGsへの取り組みも同様です。逆に、一つの目的の実現が他の目的に相反してしまうこともあり得ることについても思いを巡らせることも必要です。

下図はSDGsの各目標についても「何が実現したら、何が実現できるか」の相関性を分析したものです。企業としてSDGsに向けて取り組むには、先に記した「ソーシャル・エクスペリエンス」(本ページ末にある「追補2」参照)への発想の転換ととも、SDGsの各目標間の相関関係から「何が実現したら、何が実現できるか」について考慮し、展開していく順序を戦略化して講じていくことが重要です。

上図では、先行して取り組むべき施策として、①目標11「住み続けられるまちづくりを」、②目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」、③目標8「働きがいも経済成長も」から展開し、成果を獲得していく施策として、④目標13「気候変動に具体的な対策を」に積極的に取り組んでいくべきであることを示唆しています。この結果は、もちろん、業種業界ごとに異なりますが、複合的に施策を講じていく際の参照モデルとなり得ると考えています。

4.SX “Sustainability Transformation” 支援

当社が提供しますコンサルティングサービスは「トランスフォーメーション戦略の構想」です。service and proposalのページに示す様々なコンサルティンコンテンツやサービスプログラムによって、最終的には「 テクノロジースタックとビジネススタック(スキーム)」を描き出すことを目指して参ります。

当社サービス、『SX “Sustainability Transformation” サステナビリティ・トランスフォーメーション』にご興味のある方は サステナブル・イノベーションズ株式会社宛に  お気軽にお問い合わせ下さい。

  

【追補1】経営リスクからマテリアリティへの戦略転換と破壊的イノベーション

人々の関心は、地球温暖化や自然環境破壊といった社会問題、人権の尊重に向けられています。こうした社会の趨勢を捉えて、私たちは、身近なことやすぐにできることから発想して思考し行動するものです。しかし、顕在化している社会問題については、何をすべきかという課題も明白となっている場合が多く、解決手段そのものが既知のものであったりして、ソーシャル・ビジネスとしても飽和状態になっていたりしています。それでも、そうした取り組みは「サステナビリティ・トランスフォーメーション」と言えるものでしょう(持続的イノベーション)。「サステナビリティ・トランスフォーメーション」が破壊的イノベーションである必要性はありませんが、社会の根底にあることを変革していくのであれば、必然的に破壊的イノベーションにつながるべきものなのかもしれません。

【追補2】経験価値の地平線を超えて 「ソーシャル・エクスペリエンス」への進化

 当社の定義によれば、「サステナビリティ・トランスフォーメーション」によって、企業は、地球温暖化問題、自然環境破壊、人権に配慮し、本業の事業によって持続可能な社会の発展につながる社会的価値を創造するようになります。(*1) 地球温暖化や自然環境破壊といった社会問題、人権の尊重への意識が高まっている今日、パーパス経営が注目されいます。このことは、単に、利便性や経済合理性、職場環境や報酬ではなく、一人ひとりが社会と関わりを持って生きていくことの実現であったり、生きていく目的の実現だったりへと、経済的価値から社会的価値へと、人々の価値認識が変化してきていることを示しています。(*2) そこで当社では、提供する商品やサービスを通じて、顧客のみならず、企業や経営者を含む組織自身やその他のステークホルダ―がつながりあって社会的価値を創造していく、個々人、組織、社会の中に蓄積されていく経験価値を「ソーシャル・エクスペリエンス」と定義しています。(*3) これまでの経済成長の思考の下で、(1) 顧客視点で考える、(2) プロダクトアウトからマーケットインで考える、(3) カスタマー・エクスペリエンスで考える、へと発展してきた顧客志向の進化の経緯を踏まえ、さらにそこからサステナビリティ(社会の持続可能な発展)を思考していくと、(4) ソーシャル・エクスペリエンス で考えるようになると予測されます。(*4)

(*2) これからのカスタマー・エクスペリエンスやエンプロイー・エクスペリエンスは、ソーシャル・エクスペリエンスに包含されていくことになります。ソーシャル・エクスペリエンスでマネジメントを考えるということは、社会的価値創造を通して、個々人、組織、社会が、社会問題について理解を深め、解決に関与していく、社会変革を念頭においた経営変革をマネジメントすることとなります。また、ソーシャル・エクスペリエンスでマーケティングを考えるということは、創造した社会的価値、蓄積された体験価値を社会に普及させていくことになります。

※ここで少し専門的になりますが、組織システム A も、組織システム B も、組織の内々で切磋琢磨しながら回帰的に進化していく仕組みを内包しており、一方、組織システム C は、フィードフォワードとフィードバックの両輪を取り入れた、組織の内外との間で開かれた回帰的ダイナミズムを体現しながら進化していく仕組みを内包したシステムになる考えられます。組織システム C は社会変革へとつながるイノベーションを巻き起こしていく組織能力として作用し、その意味で、如何に、いち早く組織システム C へと移行できるかが、企業の優位性と社会に対して影響力を発揮していく上での鍵を握ります。また、組織システム C は、全体システムとして、組織システム B のフィードフォワードループと組織システム A のフィードバックループと整合させながら、社会を俯瞰した長期的な視点でバックキャスティングで戦略を構想し実現化を図っていく仕組みを内包したシステムとなります。

(*3) 企業が事業を通して、あるいは、その存在を通して直接間接に関わっているのはステークホルダーですので、それを「ステークホルダー・エクスペリエンス」と言うことも可能でしょう。しかし、経営者を含む組織の中で働いている人たちにしても、株主や投資家にしても、サプライヤや販売チャネルの人たちにしても、顧客にしても、地域社会の住民や地域コミュニティの人たちにしても、個々人は社会の中で暮らしています。こうした個々人は、投資や消費、取引、労働、社会貢献活動を通して企業との関わりを持つことで、様々な社会的な体験をして、そこで色々なことを感じ取り、思考し、行動し、社会的経験知を蓄積していくものです。そこで当社では、こうした社会的経験を「ソーシャル・エクスペリエンス」と名付けています。

(*4) 私たちは、往々にして、例えば、地球温暖化であれば脱炭素に向けた技術革新を想起して本業である事業を考えることになります。これは、経済成長の思考で言うならばプロダクトアウトの発想です。一方、サステナビリティ・トランスフォーメーションを「ソーシャル・エクスペリエンス」で考えるということは、まず、自分自身も含めて「どんな社会で生きていくか」を描くこと、すなわち、パーパスから始めるという発想に他なりません。