#146 多様性/一体性を生かしていく社会となる

 高度経済成長を支えた画一的な商品の大量生産・大量販売・大量消費の時代が終焉し、1980年頃から、ものの豊かさから心豊かさを求める声が聞かれ始めた。これは、工業科(近代化)の時代が終焉し、ポストモダンの時代が始まったとも言える。ポストモダンの時代は、また、高度に情報化が進展した多元的社会、すなわち、誰もが平等に多様な価値観や個性(アイデンティティ)を重視して生きていける社会になった時代とも言える。

 しかし、21世紀に入って久しい今日においても、大量生産・大量販売・大量消費の経営モデルで発想する人は多い。業種によってはそれも必要と思えるし、職種によっても労働集約的に働かなくてはならない仕事もある。ただ、大量生産・大量販売・大量消費の経営モデルに則って考えるべき産業は、コモディティ化した製品の低価格競争に限られてくる。そして、労働集約で働かなければならない作業の未来はロボットが担っていく様になると予測される。

 現下の働き方改革も、主に、こうした労働集約に就く労働者の働き方に着目した改革の議論に集約されている。この議論においては、人口減少社会にあって人手不足を解消するため、あるいは、生産年齢人口の総人口に対する比率の低下が若年層の社会保障費の負担増となるため、高齢者や女性を労働力として活かしていこうという発想で雇用の多様化が求められている。

 経済が成熟化し社会も成熟化した現在、今一度、ポストモダンの経営モデルの底流にある多様な価値観や個性(アイデンティティ)を重視するという発想に立ち戻ることが必要である。とりわけ、超高齢社会にあって、働きながら家族の介護をしなければならず退職を余儀なくされたり、老々介護の生活に追われたり、ある日突然職を失い多額の借金を抱えて多重債務者に陥ったり等、誰もが生きていいく上でのリスクを負い、誰もが「良好な状態(well‐being)」で人生を過ごしていきたいと願い生きている。

 顧客のニーズを満たし儲けさえすれば良いという発想は、これからの時代には通用しない。企業は、社会的課題の解決に取り組みながら、未来社会の持続可能な発展につながる事業を起こし、社会の賛同を得ながら儲けていかなければならない。そして、社会的課題のリスクを負いながら生きている従業員の一人ひとりが社会的価値創造の知の持ち主となって企業活動に関わっていくことが不可欠となっていく。

 ポストモダンの時代に情報の非対称性は崩れ、企業の経営者だけが情報や知識を独占して持っている訳でもなく、従業員の一人ひとりの持っている情報や知識とも融合させて、社会的価値を創造していかなければならない。そのためには、かつてのマネジメント階層による指示報告や権限委譲という発想の経営の仕方ではなく、企業の目的に共感し、そこで働く人たちが一体感を持ちながら一丸となって協創し社会的価値を創造していく経営の仕方に変わっていく。

サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一

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