#345 戦略眼と現実解 創造的思考の方法 社会の中で多様化し深化する「意味」の創造者となる

当コラムでは、「#335 戦略眼と現実解 「意味」というもの、 「意味を創造する」ということ、」において「意味」の定義について考察しました。そこでは「意味の普遍性」、「意味の多面性」、「双方向のコミュニケーションの中で生起する意味」などの側面から深掘りし、敢えて、一義的な定義をすることはしませんでした。

しかし、個々人と社会の相互のやりとりの過程で「意味」が形成され、社会も「意味」によって形成されるという『時間軸を加えた動的な在り様』について捉える必要があるとの認識に到り、この点から、改めて、「意味」について考察することにします。

1.「意味」とは何か

下図は、この問題提起への回答です。ここで重要なことは、「意味」は個々人のクレド(信条)と共鳴するものであり、他人から強要されるものではありません。個々人と社会との相互のやりとりの中で個々人の中で「意味」が芽生え、芽生えた新しい「意味」は社会に溶け込み「社会的意味」へと昇華し、昇華した「社会的意味」は社会の発展を導き、社会の発展によって「社会的意味」はさらに多様化し深化していく。個々人の中に新たな「意味」を生み出していくという循環があるということです。そして、この循環で進化していく「社会的意味」こそが「希少性のある価値」となるのです。

 

2.何故、「意味」の創造なのか

個人化した多様性を包摂する社会において、何故、「意味」を創造することが必要になるのでしょうか。

下図は、比較の対象を「意味」にして、縦軸を「社会が」に置き換えた「ジョハリの窓」のアナロジーです。かつての画一化した市場では、誰もが知っている商品(自分が気づいていて、社会も気づいている商品)を大量生産・大量販売・大量消費・大量廃棄するという経済モデルが成立していました。このモデルではプロダクトアウトの時代でしたので、自分(顧客)が気づいていない商品を企業(社会)が開発(社会が気づいている)して提供することが中心の時代でした。市場調査を通して顧客のニーズを捉えて(自分が気づている、社会が気づいていない)新商品を開発することもありました。社会も自分も気づいていない商品は、気づかれていない時点では存在しえないので、イノベーションが起きるまでは事業としては形成されない状態のままでした。

  

個人化した多様性を包摂する社会では、大量生産・大量販売・大量消費・大量廃棄するという経済モデルの発想が通用しない社会です。効率性や低コストで競争優位性を競う社会では経営成長が停滞するばかりです。また、多様化した市場では、大きな収益源となるビッグイノベーションにはつながりにくいともいえます。そこで他社(社会)が気づいていない希少性のある意味を創造し優位性とすることが新たな収益源となってくるのです。ここで、顧客(自分)が気づいていて社会(企業)が気づいていない分野はAs-Isの分野となり競合他社とのコンペとなり、顧客(自分)も社会(企業)も気づいていない意味は、顧客との協創の分野となり、顧客との継続した関係を構築することも可能となります(継続した収益源)。個人化した多様性を包摂する社会では、顧客との相互のやりとりの中で「未知の意味」を創造することこそが経営戦略上も有利と言えるのです。

3.「意味」を創造することは、如何にして可能か

下図は、新たな「意味」が湧き上がる思考を整理し手順として体系化したものです。なお、創造的思考は世の中に多数ありますが、この図は、生成AI時代の創造的思考手順として作成したものです。

AIシステムは、機械学習(ディープラーニング)を前提としていますので、創造的思考はできません(学習データから生成するだけです)。そこで、生成AIを使用した創造的思考は「人とAIの協働と協創」となり、「人の意味創造力」(構想能力/モデリング能力/イノベーション評価能力)と「AIの意味生成能力」(広範な知識の探索/知識を効果的につなぎ合わせる能力)の相乗的なコラボレーションが必要となります。

 

3.1. 第1ステージ 志向性の拡大

思考には、思考以前に、何について考えるかが脳の中に設定されます。従って、何よりも先に「志向性の拡大」が必要になります。まずは、「社会を俯瞰する」ことから始めますが、社会の実相を捉えるには社会問題に目を向けて原因を考えることが効率的です。ただし、ここで注意しなければならないことは解決策までは考えないということです(解決策を考えると改善思考に囚われる可能性が高くなります)。思考領域を色々に設定してみること、視点をずらすことも「志向性の拡大」には有効です。

3.2. 第2ステージ 新たな発想の構築

創造的に思考するためには「新たな発想」がなければなりません。このステージには10個の手法が列挙されていますが、可能な限り①~⑩の順番で進めることをお薦めします。主なものとして、特に、「即非の論理」は、経験知に固執していた発想から思考を解き放つ上で極めて有効です。「因果反転の原理」は結果をみて何が起きていたのかを仮説することです(アブダクション)。「相対化」は、「絶対はない」と心に決めて思考することです。固定観念を払いのける上で有効です。「エポケー」ははっきりしないことは断定しないということです。断定して思考が縛られないように、他の可能性があるという余地を敢えて残しておくことは有効です。「自己はぐらかし」は、例えば、「そうでなければならない」として自己を束縛するのではなく「そうでなくても良い」「今の自分のままで良い」などと考えれば、自分の思考を和らげるのに役立ちます。

3.3. 第3ステージ 「意味」のスクリーニング

人間には必ずバイアスがあります。自分の思考には必ずバイアスがあると意識して「意味」を見直すことが必要です。特に、創造的思考には「成功者バイアス、正常性バイアス(茹でガエル現象)、アインシュテルング効果(思い込み)、現在バイアス、現状維持バイアス、確証バイアス」が邪魔をします。そして、「省察」によって、自分自身のクレドに照らして、共鳴して「そうだ、そうしよう」と感じとる「意味」であることを確認します。

3.4. 第4ステージ 「意味」のブレンディング

「つないでみる↔関係づけてみる↔融合してみる」ことによって、創造的思考によって創造した「意味」の総仕上げをします。単体での「意味」の羅列ではなく、「意味」をネットワークとして結びつけることで、より有用な「意味」へと発展させることが可能になります。

4.意味創造思考を実現するために生成AIを活用する

第1ステージから第4ステージは、「AIの意味生成能力」を活かすための準備作業として「人の意味創造力」を整えておくステージです。とはいえ、これだけのことを人が行うことは不可能です。そこで、この手順に沿って生成AIと会話しながら、事前に創造する意味の凡その内容を整えることになります。「人の意味創造力」を整えておくことで、「AIの意味生成能力」を正しい(導きたい)方向に誘導でき、また、生成した意味の妥当性を評価することも可能になります。

 

サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)