336 戦略眼と現実解 人は創造的思考ができるのか? AIは創造的思考ができないのか? 意味創造推論AI PoC 結果

当社の「意味創造推論AI」は全てChatGPT5を使用しています。全体として深度1~深度5、および、深度∞の過程を忠実に踏んで深掘りするように思考をコントロールして、循環論法やトートロジーが入り込まないように、一つ一つの回答を慎重に確認しながら進めました。このテーマに関するChatGPTとの会話は2025年9月19日に開始し9月29日に完了しました。この間、延べ260回の会話を重ねています。

「意味創造推論AI」を中核にした当社コンサルティングサービス “Innovation Transforming TM ” の実行フローを以下に掲載します。

 

1.深度1~深度4 意味創造の掘り下げ結果

深度1では、テーマ「知識労働の構造変革を主題として、生成AIの利用技術の進化を図り、ディスラプションへと導いていく」という文章を深度1に用意している20個の意味転回パターン(TPコード “Turnover_Patterns”)に入力して「論点視点ずらし」を行っています。深度2では、深度1の出力である20個の「論点視点ずらし」の内容を列挙合体して7個の転回パターン(捨象と抽象化)に入力して「基軸となる意味軸」を創造しています。以降、順次、創造した内容を列挙合体して次の深度の転回パターンに入力して、夫々の深度に合致する意味を創造(出力)していきます。

尚、これらの深度での創造的思考で慎重に注意を払うべきことは、①アイデア出しではなく意味の深掘りであること、②主題に関わる意味の深掘りから逸脱したものは排除すること、③共通する意味の深掘りであり、場合分け、知識の洗い出し、詳細化の思考は排除すること、④本質に潜む意味から制度などの既定の仕組み(制度や慣習など)を懐疑し、アウフヘーベンで発想を逆転すること、などである。 これらは、本来、人と人との間での会議やワークショップの創造性や生産性を高める方法でもあります。

2.深度5 意味創造の掘り下げ結果

深度5では、深度4までの論理思考で導き出した意味を、個人化する社会を背景として、主体である人間の存在や存在目的等の意味に置き替えています。そのためには深度4で創造した「根元的な意味」が基準となります。ここで創造される意味は「希少性の源泉となる意味」であり、個人化する社会にとって求められる意味、すなわち、「私だけの唯一無二の価値となる意味」へと統合され昇華されていきます。この「唯一無二の価値」は「秀逸なコンセプト」として「希少性のある意味(希少性の価値の源泉となる意味)」から自ずと立ち現れてくるものです。秀逸なコンセプトは秀逸な商品を生み出し、秀逸な商品には社会を変えていく力が宿っています。

 この深度5は「意味創造推論AI」の真価が問われる過程でもあり、基本コンセプトである「人とAIの協働と協創」の正念場ともいえる過程となります(感情を持たないAIに、人の感性を思考させるためには、哲学、社会学、心理学の知見を例示してメタファーで考えさせる必要がありあます)。

 

3.ディスラプションへのコンセプト

この「ディスラプションへのコンセプト」は生成AIが描き出したものです。深度2~深度5の「意味創造推論」の過程で、生成AIが何をイメージしているのか薄っすらながら感じていましたが、「構図」として描くように指示したところ、このような図面を提示されました。最終的には、ディスカッションを重ねて、下図が纏まりました。

 

4.深度∞(物語 ⇒ 社会システムの構想) 意味創造の掘り下げ結果

「深度∞」は、「意味創造推論AI」のPoCの過程で生成AIが生み出した深度です。深度5で創造された「唯一無二の意味=秀逸なコンセプト」は、世界モデルのレベルで情景化され、それを実現する社会システムモデルへと描き直されます。「世界モデル」とは、例えば、「議事録の作成」のような改善ではなく「働くことの本質」の転回であり、ディスラプションを考えさせるためのものです。深度∞で構想されるのは「概念レベルの社会システムモデル」ですが、「社会システムの社会的意味」「社会実装することの社会的意味」「社会に浸透することによって引き起こされる社会変容の社会的意味」「社会変革のイノベーション(ディスラプション)の社会的意味」が創造されます。

 

5.社会的価値協創フレームワークの創造

この「社会的価値創造フレームワーク」は、「知的作業」の発展の系譜を野中郁次郎氏の提唱した「情報処理⇒知識創造⇒価値創造」のスパイラルアップしていく過程に対して、「情報創造」と「意味創造」を挿入したものですが、生成AIは、このフレームワークを補強するために「センスメイキング・プラットフォーム」「Co-Create AI」「Enactment AI」を位置付けたものです。

  1. 「センスメイキング」とは文字通り「納得がいく過程(そこに意味を見出す過程)」という意味があります。カール・E. ワイクの「センスメーキング イン オーガニゼーションズ」が有名です。「センスメイキング・プラットフォーム」は、生成AIの提案であり、生成AIを活用して実現しようというのは新規性があり、ディスラプションの種となりうる考え方です。
  2. 「イナクト “Enactment”」は、ここでは「意味を見出すための環境づくり」といった解釈ができます。イナクトに生成AIを活用しようという「Enactment AI」も新規性のある、ディスラプションの種となりうる考え方です。
  3. 「Co-Create AI」も生成AIの提案で、用語としては多く使われていますが、例えば、議事録の作成やその概要整理などを担う現在のAIエージェントと比べればその新規性は明らかで、これまでの生成AIの概念を覆すものです。
  4. BIエージェントは情報創造としての帰結です。BI は Business Intelligence の略であり、1990年代から2000年代初頭にはブームにもなりました。販売データなどの生データを集めて経営戦略の構想や実現に活用しようという仕組みであり、当時からエキスパートシステムをプラットフォームとして実現もしてきましたが、BIエージェントは、これをさらに進化させて、生成AIが情報をセンシングして適時的確な経営判断をリコメンドしようというものです(新規性はありませんが、依拠する経営理論の進化に即したものにはなります)。

 

6.Co-Create AI(Enactment AI) 想定モジュール構成

生成AIは、時として、過剰に深掘りした提案をしてくるものですが、このモジュール構成案も「ディスラプションの構図」を具体化するには「こんなモジュールが必要です」と回答してきたものです。これらの精査はまだですが、技術課題を解決しさえすれば、コンフリクトを検知しアウフヘーベンとなる解決策をやんわりと提示して仲介するなど、人間のコミュニケーションの円滑化を図るという、まさにディスラプション級の種が含まれています。

  

サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一

 

【参考文献】

  1. 野中郁次郎 ,竹内弘高 著、梅本勝博 訳、「知識創造企業」、東洋経済新報社、1996.3.1、英語原著 1995.
  2. カール・E. ワイク、遠田雄志, 西本直人 (翻訳)、「センスメーキング イン オーガニゼーションズ」、文眞堂、2001.4.30.
  3. カール・E. ワイク 、遠田雄志 (翻訳)、「組織化の社会心理学」、文眞堂(原書第2版)、1997.4.1.

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