暮らしの中にあるストーリーの切り口と要素

私達の日々の暮らしは、ある程度のパターンはあっても、状況(コンテクスト)に応じて多様に変化しています。たとえ同じ様な題材で小説を書くにしても、着眼の仕方、誰の視点、どんな場所のどんなシーンで描くかによって如何様にもストーリーを創作することができます。しかし、これからの社会、多様な個性が重視される社会においては、顧客の暮らしの中にあるストーリーを思い描けなければビジネスの成功はありません。
 
無限にある暮らしの中のストーリーを如何に描くかは、暮らしを捉える切り口と影響を与える要素を如何に整理し組み合わせうるかにかかっています。
 

 
上図では、暮らしを捉える切り口を以下の様に体系化し整理しています。しかし、常に、その全てを考慮しなければならないという訳ではなく、夫々のビジネスに応じて、また、その場の空気に応じて切り口を絞り込んだり、組み合わせたりすると良いでしょう。

1. 衣食住、生活インフラ(生理的欲求を満たしていく活動)
2. 健康、スポーツ
3. 子育て
4. 医療、介護
5. 交通、通信
6. 交際
7. 社会的活動
8. 文化創造活動
9. 行楽、娯楽
10. 家事や仕事
11. 教育、自己啓発
12. 将来への投資(学位、資格)
13. 預金、投資

 
これらは、暮らしている地域や経済状況によって様々に違いはありますが、都会にいようと田舎にいようと、裕福であろうと貧困であろうと、誰と暮らそうと、これらを捉える切り口に差異はあまりありません。その意味で、この切り口は「暮らしのメタモデル」となりうるものと言えましょう。
 
そして、私達は日々の暮らしの中で、これら切り口に対して、

  • 場の実現
  • スタイルの実現
  • シーンの実現
  • 心の中の商品の存在感
  • 購買の意味づけと価値づけ

への心の持ち様によって、下記の “実現したいこと” を、現実のこととして実現させていこうと精一杯に努力して生きています。

(1) 裕福な暮らし(経済的な裕福さ)
(2) 心豊かさを感じる暮らし
(3) 健やかな毎日
(4) 家族団欒(円満な家庭)
(5) 自分らしい生き方
(6) 金儲け
(7) 将来への備え(貯蓄、節約の暮らし)
(8) 最先端の流行の暮らし
(9) 余生の悠々とした暮らし
(10) 豊かな人間関係の構築
(11) 地位の向上
(12) 社会、文化活動への参画

 
しかし、これらは常に、以下の要素の影響を受けることにより多様に変容していきます。

(1) 信条(世界観、人生観、倫理観、理想像、教訓、戒、きたり)
(2) 感情(愛憎、喜怒哀楽/苦、好き、嫌い)
(3) 人間関係
(4) 社会心理、深層心理
(5) 時代のムーブメント、世の中のトレンド、ブーム
(6) ライフスタイル(職種、収入、家族構成、年齢構成、世帯構成、持ち家/賃貸、地格、駅からの距離、居住年数等)
(7) ライフイベントのプレイス/スタイル/シーン、買い物のプレイス/スタイル/シーン/購買心理、生活の中での商品のプレゼンス、世の中のトレンド、ブーム
(8) 動線 (移動手段、経路等)
(9) 五感覚(色彩・色合い・彩り、音色・心音・癒しの音・心に響く音階の音楽、風味・アロマ・匂い、味わい・鮮度・精進、手触り・肌触り・肌感覚、体内感覚・体内時計、わびさび・遊び・間、シーンの記憶)
(10) 地域性、地域の地勢と自然環境、地域のヒストリー(文化、政治経済、災禍等)
(11) 家族のヒストリー(過去から未来へ、祖父母から親、子、孫へ)

 
尚、ストーリー作成のコストを考えた場合、想定する生活者層(地域住民、そこに住む標的顧客層、そこに住む関心を抱く顧客、そこに住む魁け顧客、そこに住む実際の購買者、そこに住む実際の利用者)に絞って作成するのが現実的と言えましょう。