サステナブル経営に人工知能を活用する (3)

経営への人工知能活用の技術レベル

これまでの考察を踏まえて、経営への人工知能の活用に求められるコンセプトは、以下に示す4つの視点、及び、それら視点からの自動化レベルによって整理することができます。

 

①事実を捉える情報の見直し

レベル1:外部情報として地理情報システム(GIS:Geometric Information System)を引用し取り込む。また、社会的価値創造の生産性指標の体系化を図り、指標連関図を作成する。
レベル2:指標値を収集するためのデータモデルをデザインする。また、検索エンジンを利用して、外部組織(競合企業、仕入先企業、販売先企業、関連する公官庁等のホームページ)に掲載されているキーワードやSNS(Social Network Service)の中で注目を浴びているトレンドキーワードを収集する。
レベル3:指標値、トレンドキーワードを自動収集する仕組みを確立する。また、“此処で起きたことは彼処でも起きる” を見透す推論エンジンの仕組みを確立する。

②打つべき手立てのナレッジベースの構築

レベル1:事象、深層要因、施策のビジネス知識を現場目線に立って整理し、ビジネス知識ベースの標準データモデルをデザインする。また、関連するビジネス知識をリンクづけする(BKN:Business Knowledge Network を構築する)。
レベル2:世の中で定説となっている経営理論等の定石を体系化し整理(どの場合にどの理論を使うべきか)する。また、顕在化している表面的な問題やニーズと深層にある要因との関係性(関係の有無、関係の強さ)を評価する知識ベースの仕組みを確立する。
レベル3:顕在化している表面的な問題やニーズと深層にある要因との関係性(関係の有無、関係の強さ)を学習(Deep Learning)する仕組みを確立する。

③施策を探索し創造する(仮説の創造、アブダクション)仕組みの構築

レベル1:指標値、トレンドキーワードから状況を推察し、符合するビジネス知識を検索することのできる仕組みを確立する。
レベル2:一つのビジネス知識に関連して抽出した知識から新たな知識を新結合して生み出すきっかけを提供し、創造した施策案を評価して実証する。また、実証した事例を蓄積する。
レベル3:指標値、トレンドキーワードから状況を推察し、符合するビジネス知識の候補を自動抽出し選択肢として代替案を提示するする仕組みを確立する。

④[意思決定]の透明化

レベル1:多基準意思決定を支援する仕組みを導入し、透明な[意思決定]の仕組みを構築する。
レベル2:[意思決定]の事例を整理して、BKN:Business Knowledge Networkと多基準意思決定支援システムのインターフェースを定型パターン化して汎用化し、連携できるようにする。
レベル3:多基準意思決定支援システムで選択して[意思決定]した内容に類する事例(過去に起こったこと)を抽出して、[意思決定]の結果として起こりうる事象(予測されるシナリオ)を提示する。

 

経営への人工知能活用のロードマップ

現時点で考えています、経営への人工知能活用のロードマップを下図に示します。

 
 上図のロードマップの設計思想では、「人工知能活用の技術レベル」に則し、実現の容易性や必要性を考慮してバージョン1.0、バージョン2.0以降のステージに分けて、更に、バージョン1.0を4つのリビジョン(AIM1.01~AIM1.04)に分割して考えています。
 また、バージョン1.0では、開発と並行して適用事例の研究と技術動向調査を行い、バージョン2.0以降の開発にフィードバックして参ります。

 尚、現時点(2016年8月10日)では、AIM1.01 の実現段階にあります。ビジネス知識データベース(BKN:Business Knowledge Network)につきましては、継続的に充実化を図って参ります。