#172 オープンイノベーションによる経済成長の社会になる

 Linux の開発を事例として、オープンイノベーションが進んできた。一つの企業が独自に開発し、また、他の企業の開発したものと競争するよりは、スペックをオープン化して、開発への投資を抑制し、かつ、世界中の知恵を入れて進化させていった方が得策であることと理解される様になった。

 20世紀型産業構造においてはデファクトスタンダードの座を獲得することが大きな収益源となり、企業を潤し、産業構造を支えて国全体を潤してきた。20世紀型産業構造においては、また、コアとなる技術は自社内に囲い込んで差別化し、それを組み込んだ製品の組み立ては安価な企業に任せて大量生産・大量販売するライセンスビジネスの発想が企業戦略の中核的思想であった。デファクトスタンダード戦略とコアコンピタンス戦略は高度経済成長期にあった発想の戦略である。

 しかし、漸進的な持続的イノベーションを続けていっても市場は限定(囲い込んだ顧客に限定)されていくばかりである。一方、経済成長しつつある新興国の巨大な需要を満たすにはローエンドの破壊的イノベーションが必要となった。中国の様な新興国では安価な労働コストを背景に下請けで経済成長を支えてきたが、そこにはローエンドの破壊的イノベーションで強大な需要にこたえていくノウハウが蓄積されていった。逆に、そうしたノウハウさえあれば、ジャンクな部品を使って安価な製品を組み立てて販売することができる様になった。オープン化は、こうして進展してきた。オープンイノベーション戦略は、グローバルで後進国や新興国の経済成長に適した戦略である。ロボットや人工知能は、形式知で対応できる仕事や人間にとって負担の大きい労働集約の定型的な仕事に対応していく。ハイエンドの漸進的イノベーションやローエンドの破壊的イノベーションも、次第に、ロボットや人工知能が担っていく様になるだろう。

 グローバルに広がり浸透してきているシェアリングエコノミーのビジネスモデルにはローエンドの破壊的イノベーション戦略が適している。これからの社会はシェアリングエコノミーに向かっていくことを考えると、オープンイノベーション戦略はこれからのイノベーション戦略の中核になっていくとも思われる。オープンイノベーションは、夫々の企業が独自に資源を投入してイノベーションを興すよりも、社会全体としては負担が少なくてすむ。また、各企業の固有の文化や技術でイノベーションを彩るのではなく、社会にある多様な文化や技術を相乗させてイノベーションを興した方がより社会の発展に適したイノベーションにもなると期待される。

 業種や職種によっては、オープンイノベーション戦略よりもデファクトスタンダード戦略やコアコンピタンス戦略が向いていると思える場合がある。しかし、社会はグローバル化とボーダレス化へと向かっていく。業界の枠を越えてボーダレス競争になることも想定した場合、どちらの戦略を選択するかが、これからの時代の戦略の本質となる。

サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一

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