どん欲さと自律

池邊 純一氏
2010/02/19

最近の日本代表サッカーの試合を見ていて、みなさん、苛立ちを覚えませんか。

私は、サッカーの専門家ではなく素人の意見ですが、ゴール前に流れを持ち込むまではフォーメーションプレーで美しく決めていても、相手ゴール前でシュートせずにパスを回し、満を持して放ったシュートはゴールと違う方向に飛んでいくところに、実に、歯がゆさを感じます。

話しは変わりますが、先日、日本の製造業を代表する超一流企業の社長の講演を拝聴する機会がありました。その社長は、「最近、現場の人が言われたことしかしなくなった」と嘆いていました。そこで、現場の人達が自ら課題を見つけるためにどうすべきかと質問したところ、まずは、先行しているものを真似して学ぶことだと回答されました??

さて、自己紹介が遅れましたが、私は大学卒業後、日本企業に18年、外資系企業に12年勤めた後、昨年10月に起業しました。BPIAには、昨年(2009年)12月に入会致しました。

最初に入社した日本企業では、電子回路自動設計システムやCASEツールの開発を担当しました。その当時は、ソフトウェア工学が花盛りの時期で、ウォーターモデルでの開発を如何に適切に実施するかがプロジェクトマネジメントの手腕でした。そこでは、上流工程で決める仕様の品質が重要であるとされ、ユーザレビューも徹底して行われていました。私は、電子回路設計の経験がありませんでしたので、設計者に沢山の質問投げかけ、製造現場で電子回路の製造工程を観察しどん欲に勉強してシステム要件を自力で纏め上げ、厳しいレビューを何とか乗り越えてきました。

一方、その後在籍した外資系企業では、一人ひとりの役割と目標が厳密に定義されていました。そして、決められた範囲で役割を果たすことで目標を達成することが業務の目的となり、その枠組みに沿った行動がなされるよう徹底されていました。

最初のサッカーの話題に戻りますが、ゴールするという目標は明確でありながら、何故、攻撃的にシュートしゴールを狙わないのかとの問いに、私は後者のケースを当てはめてしまいます。日本を代表する超一流製造業の社長が嘆く「最近、現場の人が言われたことしかしなくなった」もまさにこうしたことではないかとも思います。

「自律」という言葉がありますが、組織の中で決められた枠の範囲で自らの裁量による行動が求められたとしても、それでは「自律」にはならない。一人ひとりがどん欲に目的を追求することの中に、本当の「自律」があるのではないかと思います。目的と行動が整合して組織に周知されていれば「自分勝手な行動」ではなく、組織を乱すことにもならないとも思います。そして、どん欲に目的を追求する人は、やがて、組織を引っ張っていくことにもなるのだと思います。

サッカーのワールドカップも間近ですが、ワールドカップという大きな場でどん欲にゴールを目指しチームを勝ちに導くスタープレーヤーが生まれたなら、日本は勝ち進むこともできるかも知れません。日本企業も元気がありませんが、こうした時期だからこそ、役割と目標で人々を縛ることなく、多様なスタープレーヤーを生みだす風土を築くことが必要な気がしています。

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