Wise Co-Creation

バブル経済崩壊以降30年余り、経済成長を牽引する多くの産業で日本は世界に遅れを取ってきました。この停滞した期間に日本社会は高度経済成長の成功体験に引きずられ、新たな流れを起こして大きな流れを掴むよりも細部のカイゼンにこだわり続け、その結果として、「ガラパゴス化」「茹でガエル現象」などとも揶揄されてきました。その一方で、バブル経済崩壊以降に何をしても成功体験が得られないという絶望感によって、日本人の心はすっかり抑うつ的になってしまいました。

1.何故、賢い共創 “Wise Co-Creation” なのか

 今の日本にとって最も必要なのはトランスフォーメーションです。そして、トランスフォーメーションを巻き起こし実現いくのは、個々人の力ではなく、連携し相乗し合って能力を結集して創造していく『共創 “Co-Creation”』です。

 『共創 “Co-Creation”』とは、様々な知見を持った企業や多様な立場の人たちが、新たな社会的価値を「共に創り上げていく」ことです

 今日の社会は複雑化し、ただ単に経済活動により利潤を追求すればよいというだけでなく、地球温暖化問題への対応、自然環境の保護、人権を重視し社会の多様性や社会的包摂性も求められるようになりました。成熟化した社会にあって、今や、エコノミック・グロースを実現するだけでなく、サステナビリティを実現していかなければなりません。

 これは、単なるこれまでの「共創」ではなく、当社が提唱する『賢い共創 “Wise Co-Creation”』が求められているのであり、これからのあるべき企業経営の姿です。

2.様々な葛藤(コンフリクト)の克服

 「変革に対して生じる葛藤(コンフリクト)」に示したように、変革を起こそうとすると、そこには必然的に葛藤(コンフリクト)が生じます。葛藤(コンフリクト)を回避することはできません。あるいは、葛藤(コンフリクト)と真っ向から対決しようとしても、多大な時間と努力が虚しく労費されるだけです。
 むしろ、葛藤(コンフリクト)を受け容れて、そうした葛藤(コンフリクト)が、何故生じるのか、どのような思考過程によって生じるのかを理解した上で、変革との共生(アウフヘーベンや脱構築)を図っていくことの方が、結果としては得られることが多いのではないでしょうか。
 「何故、葛藤(コンフリクト)が生じるのか」を上手く活用していくことが、変革を実現していく上での近道になります。決して、王道はありません。

2.1. これまでのマネジメントは葛藤(コンフリクト)をコントロールできなかった

 日本製品の品質が高いことはグローバル社会でも認められてきたことです。しかし、近年、検査データの改竄といった事件が相次いでいます。こうした企業の不祥事が生じるたびに経営者は、社内に調査委員会を設置するなどして事実と原因を調査し、コンプライアンスの問題として真摯に謝罪し再発防止に努力することを約束することになります。
 もちろん、経営者は何らかの経営責任を取ることにはなりますが、コンプライアンス問題として当事する部門やその管理責任者、担当者も責任を取ることになります。しかし、本当にこれだけの問題として片づけられるだけで良いのでしょうか。そうではなく、下図に示すように、多くの場合、マネジメント(経営と管理)と現場との間の様々なコンフリクト(図例では、正常性バイアス、同調圧力、忖度、社会的ジレンマ、認知的不協和)が放置されて生じた断層によって意思疎通がうまくできていなかったことに起因しているのではないか、すなわち、日本企業の組織能力が低下してきているのではないでしょうか。
 また、今日では、経営から現場へのエンパワーメントが、現場から経営へのエンゲージメントが推奨されています。個々人の自律性を高めて生産性を高めるという意味では望ましい方向性ではありますが、その仕組みは、むしろ、決められたことを決められた範囲で実施し、その範囲を超えたことは行ってはならないとすることにつながります。その結果、分業による組織の縦割り化が先鋭化し、さらなる、対立関係と分断を生み出してしまうことにつながります。そして、そうした組織では、マネジメント(経営と管理)部門と現場部門、事業部門と事業部門の間での利害が衝突してコンフリクトが助長されてしまいます。

  

2.2. 葛藤(コンフリクト)を克服することによりこそ組織能力は高まる

一方、下図は、マネジメント(経営と管理)と現場との間の様々なコンフリクトを下記施策により克服することで真の意思疎通を実現していく理想的なシナリオを示したものです。

  1. 企業の存在意義と個々人の生きる目的を共有する
  2. マネジメント(経営と管理)側では変革への意思とリスクテイクすることを約束する
  3. その実現のために現場部門には自律して協働する分業という働き方を提供する
  4. 経営層と現場の相互の「エンパワーメント×エンゲージメント」による信頼関係を醸成する
  5. 現場部門は内発的に提案&コミットを行うことを推奨し、マネジメント(経営と管理)は、結果に対して賞賛(承認)して強い信頼関係を創り上げていく

その結果として、マネジメント(経営と管理)では経営と現場の一体化を図られ、現場部門では率先垂範して行動しようという意識が醸成され、結果的に組織能力が高められていきます。

  

なお、コンフリクを克服し組織能力を高めていくための基本的な考え方を整理して列挙すると、以下のようになります。

  • 問われるのは社会に対するインパクトと自らの行動に対する説明責任である
  • 社会を動かす企業には経営と社員との意思疎通による相互理解と方向性に対する共感が必要である
  • 個々人が各々の自由意志のもとで夫々に抱く Well-being を追求し活動していく社会になること(社会の発展)

  

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