変革に対して生じる葛藤(コンフリクト)

ガリレオ・ガリレイの有名な言葉「それでも地球は回っている」は誰でも聞いたことがあると思います。あるいは、イマヌエル・カントが用いた「コペルニクス的転回」という言葉も良く知られていると思います。これらは、ある意味、それまで主流だった「天動説」を否定して「地動説」こそが正しい説とする認識が社会に受け入れられることの難しさを表した言葉であるとも言えます。
このように、それまで主流だった思考を変えるには、事実を積み上げて既存の説を否定するだけでなく、社会に受け容れられるまでに多大な時間と努力が必要となります。何故なら、そこには、社会との間に様々な葛藤(コンフリクト)が生じるためです。それは、学説に限らず、技術革新、特に、破壊的イノベーションを起こしていくにも、そして、社会変革や組織変革においても、同様の努力が必要であることに変わりはありません。

1.何故、葛藤(コンフリクト)が生じるのか

当社では、下図に示すように、葛藤(コンフリクト)が生じる理由を6つに大別し、さらに、詳細に社会の構造的仕組みや社会と個々人の関わり方に起因する要因を挙げています。

  

2.常識に潜む非合理性

「変革」には葛藤(コンフリクト)が付き物ですが、葛藤(コンフリクト)は必ずしも合理性があるものではありません。しかし、葛藤(コンフリクト)に伴う様々な議論があるからこそ、「変革」の思考は累積思考量を積み上げ洗練されていくものであり、そこに民主的な手続きが施されるからこそ、多様性を尊重し社会的包摂性を具備した「変革」となっていくものなのです。

  1. 「変革」するということは、すなわち、それまでの常識に潜む非合理性を指摘し、旧来からの思考の過不足を補い、全体を俯瞰して新たな発展へと進化させていくことでもあります。
  2. 従って、「変革」を起こしていこうとすると必然的に葛藤(コンフリクト)が生じます。
  3. それゆえ、「変革」を推し進めていくためには、この葛藤(コンフリクト)の深層にある原因を見つけ出して、葛藤(コンフリクト)を根底から解決する必要があります。

  

ここで、「常識に潜む非合理性」についてですが、「思考の過不足を補う」「全体を俯瞰して新たな発展へと進化させていく」という言葉と一対にして理解する必要があります。
世の中には「部分最適」と「全体最適」という言葉がありますが、個々の事情に照らして非合理かも知れないし、全体として良ければここは犠牲になっても良いというものではありません。「全体を俯瞰して」とは、個別の事情にとっても、全体としても非合理であること、即ち、「思考の過不足」を補っていくものが「変革」でなければなりません

3.葛藤(コンフリクト)はどのようにして変革を阻害するのか

当社では、「常識に潜む非合理性」を4つのカテゴリーに分類して整理しています。

  • 内在する自己矛盾
  • 発想の限界
  • 暗黙の了解(前提知識や前提条件)
  • 忌避/禁忌

社会は固定されたものではなく、技術の発展や人々の社会における共通認識、経済発展(経済成長によってもたらされた経済活動のあり様)といった様々な要素の発展段階において様々に変動しています。多くの人びとが日々の生活の中で正しいと信じて過ごしてきたものも次第に現状との間で矛盾が生じてくる場合もあります(内在する自己矛盾)。また、技術の進歩などで、かつては思ってもみなかったことが実現されるようになると思考の幅も広がっていきます(発想の限界)。「〇〇神話」といった根拠もなく正しいと信じてきたことを前提としていることもあります(暗黙の了解(前提知識や前提条件))。社会には不文律があります。また、慣習や規範の中には非合理と思われながらも「掟」のように人々を縛り付けているものもあります(忌避/禁忌)
これら全てが社会の発展を阻害するものとして否定し排除しようとしている訳ではありません。その深層には人間の奥底にある心理的な要因によって引き起こされている現象であるものも多くあり、誰しも、心の奥底にはこうした心理が働いているものです。ある意味、不可避のものなのです。
上図では「コンフリクトを引き起こす深層にある代表的な要因」としてそれら心理的な要因を代表例として列挙しています。そして、 「何故、葛藤(コンフリクト)が生じるのか」という問いに対して、「葛藤(コンフリクト)」を「常識に潜む非合理性」と「コンフリクトを引き起こす深層にある代表的な要因」に分類して細かく分析することで、その答えを大凡把握することが可能になります。それは、他者に対してだけでなく、自分の中にある葛藤・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・の分析についても活用することができます。この分析結果は、「変革」を思考していく上で、また、「変革を共有する」上でも、有効なみちしるべになります。

  

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