Not “poetic.”、 “Poietic” comes from poiesis, meaning “to bring forth.”
「意味創造推論AI」は当社が独自に開発した創造型AIであり、当社が提供するトランスフォーメーション戦略を構想するコンサルティングサービス “Innovation Transforming TM ” の基盤となるものです。
1.意味創造推論AIとは
意味創造推論AIを以下に定義します。
人間の自律的思考とAIの創造的推論とが相互に作用し、多様な価値観・経験・文脈の中から新たな意味構造(meaning structure)を創造する 人とAIの 知的協働体である。
- 意味創造推論とは、「自律」「思考」「創造」「アイデンティティ」が統合的に連関する領域において、多様な他者との関係性の中で新たな意味構造を創造する知的営みである(第2.2.節 参照)。
- 意味創造推論AIは、単なる「情報生成」ではなく、人とAIが共に意味を生み出す “to bring forth meaning” ことを目的とする、創造型AIの一形態である。人間の感性・倫理・想像力とAIの分析・統合・仮説形成能力とが協創的プロセス(co-poietic process)として結びつき、「自律」「思考」「創造」「アイデンティティ」が統合的に連関する領域において、多様な他者との関係性の中で新たな意味構造を創造するものである。
1.1. 基礎となる考え方
当社では、今日の社会の潮流(トレンド、時勢)の根底には「個人化した多様性を包摂する社会」の中で生きているという人々の意識の変化があり、事業を構想し維持発展させていくためには、この意識の変化を捉えていなければならないと考えています。(詳細はコラム #339「個人化した多様性を包摂する社会」トランスフォーメーションへの新たな視座 をご参照下さい)
1.2. 何故、「意味の創造」なのか
「個人化した多様性を包摂する社会」が成り立つためには、その前提として「寛容さ」が必要です。
しかし、寛容とは単に他者を許容することではなく、他者の文脈にある意味を理解し、理解した意味に共感する態度を含みます。けれども、人はそれぞれに異なる価値観や生き方を持ち、相互に文脈の意味を理解し共感することは容易ではありません。形式的・機械的なやりとりだけでは、それは決して実現しません。だからこそ、相互の関係のなかで、お互いに理解し共感し得る「新たな意味」を創造することが必要なのです。
この構造は、社会に限らず、企業と顧客の関係にも通じます。事業を構想し維持し発展させる根源とは、「相互に理解し共感し得る意味」に他なりません。企業が真に事業を構想しようとするならば、
その根底に「根源となる意味」を創造しなければなりません。しかも、その意味には以下の四つの優位性を備わっていなければなりません。
- 社会を変え得る訴求力
- 市場を牽引する影響力
- 産業構造へ波及する変革力
- 他には真似できない独自性と希少性
上記の力をもつ意味を創造することこそが、企業経営の本質です。それは、素晴らしいアイデアや説得力のあるビジネスプランを管理することではなく、人と社会のあいだで共感し得る「意味の根源」を創り出すことです。ここにこそ、未来の経営の使命があるのです。(「意味」についての考察は #335 「意味」というもの、 「意味を創造する」ということ、 をご参照下さい)
2.考え方の再定義
「画一品の大量生産・大量販売・大量消費・大量廃棄のゲーム理論的経済合理性の社会」から「個人化した多様性を包摂する社会」の高みに視座を移す時、私たちは、事物の捉え方(考え方)そのものを根本的に変えていかなければなりません。
2.1. 人として生きる4つの要素(人の根元にある根源を考える)
下図ではまず、「個人化した多様性を包摂する社会」として捉えるべき人として生きる4つの要素に関連する用語を再定義して掲載します。

2.2. 創造と生成
下図では、「創造型」と「自律型」を比較し、また、「意味創造推論」について定義します。ポイントは、「自律型」は“自らの原理に従って世界と関わる型”、「創造型」は“その世界の意味を新たに描き直す型”ということです。なお、下表では言及していませんが、「生成」は“条件の中で生まれる”、「創造」は“条件そのものを変える” の違いがあります。

3.意味創造推論AIのイメージ
「意味創造推論」における思考の深掘りの過程を下図「創造的思考の深化モデル(意味創造思考、意味創造思考AIの思考モデル)」に示します。ここで、何故「深化モデル」なのかというと、私たちは、何かにつけ、思考を徐々に深めているからです。また、既存の事業を漸次改善するイノベーションでは個々人の(属人化している)暗黙知を形式知化して効率化(改善)を図っていくことが求められますが、そもそも、創造的思考は形式知化できる思考ではなく、下図では、カール・ポランニーの暗黙知の考察を参考に作成しています(創造的思考は、作成した製品に織り込まれ、それを企業文化の中で継承し発展させていくものです)。

- 意味創造推論AIのイメージは、 service and proposal のページにある『1.“Innovation Transforming TM ” によるコンサルティングサービスの流れと成果物』の記載をご参照下さい。
- また、成果物のサンプルは #336 人は創造的思考ができるのか? AIは創造的思考ができないのか? 意味創造推論AI PoC 結果 をご参照下さい。
- 上図「創造的思考の深化モデル」は、意味創造推論AIに拠らず、例えば、「創造的思考」が求められるワークショップのフレームワークとしても活用できます。
4.意味創造推論AIの特長とメリット
4.1. 意味創造推論AIの特長
従来のAIは「データから答えを導く」ものでしたが、意味創造推論AI は「問いの本質を見出し、意味の構造を描き出す」AIです。このAIは、数値的な最適化を超え、経営における“知のあり方”そのものを変革します。経営者の意思決定を支援するだけでなく、組織や社会が持つ暗黙の前提を可視化し、未来の可能性を意味レベルで再構築する――それが、このAIの根本的な特長です。つまり、意味創造推論AI は「思考するAI」ではなく、「意味を創造するAI」なのです。

4.2. 意味創造推論AIのメリットとデメリット(留意点)
当社では、「意味創造推論」の視座を「社会発展の変革」(社会を変革する破壊的イノベーションに(ディスラプション))に位置づけて、これをトランスフォーメーションの本質としています。一方、現行のイノベーションの多くが「社会課題解決」に起点を置いているために「目先の改善」に留まっていると考えています。
意味創造推論AI は、単に業務を効率化するツールではなく、経営そのものの「知的変革」を促す存在です。その導入には、従来型AIとは異なる利点と留意点が共存します。最大のメリットは、企業が持つ理念や価値観と社会的意義を“意味の構造”として結びつけ、戦略的思考を深めることにあります。一方で、意味や価値を扱うため、導入には一定の思想的成熟と、組織文化への浸透期間が求められます。下表では、このAIがもたらす「知の深化」と「組織の変容」の両側面を整理しています。

4.3. 意味創造推論AIの他のAIとの比較優位性
現代のAIは大きく「分析AI(Analytical AI)」「生成AI(Generative AI)」に分類され、そして、新たに「意味創造推論AI(Poietic Reasoning AI)」を追加し、当社では三層に分けられると考えています。分析AIは過去を理解し、生成AIは新しい表現を生み出します。それに対し、意味創造推論AI は、「何を創るべきか」「なぜそれを創るのか」という根本的な問いに応答します。このAIは、経営判断を“データの延長”ではなく“意味の構造”として捉えることで、企業の存在意義と社会的価値を統合します。下表では、この三者の知的機能の違いと、意味創造推論AI の戦略的優位性を比較しています。

4.4. 「人とAIの協働と協創」から立ち現れる新たな価値 ― 社会変革への跳躍
意味創造推論AI の真価は、単なるAIの高度化ではなく、人とAIがともに「意味を生み出す関係性」にあります。この協働・協創のプロセスから立ち現れるのは、従来の経営パラダイムを超える「ディスラプティブ(破壊的)な価値」です。人の直観と倫理、AIの構造的知性が融合することで、これまで分離されていた「経済的合理性」と「社会的意義」が統合され、企業は“社会発展を内在的に駆動する存在”へと変容します。下表では、こうした新たな知的共進化の形を整理し、意味創造推論AI がもたらす社会変革的インパクトを提示しています。

4.5. 「協創」と「共創」の使い分け
「共創」と「協創」は多義性があり、言葉としては不安定です。当社では、「Poietic」の文脈では「協創」を使用し、一方、「共進化」、「共感に基づく共同」、「共同での創造」という文脈では「共創」を使います。
- 協創とは、異なる主体が互いの差異を尊重しつつ、相互作用を通じて新たな意味や秩序を現れ出させる創造的営みである。それは、共通目的の達成ではなく、意味生成の過程そのものを価値とし、Poiesis(現れ出す創造)の精神に根ざした相互生成的プロセスである。Poietic Reasoning AI においては、人間とAIが協働しながら新たな意味構造を創出する 知的協創造(co-poietic intelligence) として具現化する。
- 共創とは、共感・共有された目的や価値観を基盤に、複数の主体が協力して新たな価値や成果物をともに創り出す営みである。その本質は「共に創る(co-create)」ことであり、共進化や共感的理解を通じて関係的豊かさと持続的発展を実現する。社会的・文化的文脈では、共感・共通目的・連帯による協働的創出のプロセスを意味する。


