なぜ 「QOL “Quality of Life” を求める社会」なのでしょうか?

 今の社会は、一人ひとりの個性が重視される社会であり、一人ひとりが夫々に QOL “Quality of Life” を求める社会です。しかし、QOL “Quality of Life” を求める社会が形成されるまでには、歴史的に見ても長い様々な紆余曲折がありました。こうした社会と経済の発展を大まかにたどってみると、以下の様に整理されます。

  1. 産業革命が起きた18世紀頃のヨーロッパの多くは君主制社会であり、日本は鎖国された武家社会、米国はまだイギリスの植民地)の時代でした。
  2. 欧米では18世紀後半以降になってようやく人間的尊厳や市民的権利が重視される自由主義経済の社会へと発展してきましたが、根強く植民地主義も残っていました。一方、日本は、19世紀後半になってようやく開国し、天皇を中心とした帝国憲法の下で欧米の制度を取り入れて急速に追いつこうとしていました。
  3. 20世紀になると、大量生産・大量消費を前提にした近代経済モデルにより富と裕福さを追求する社会になり、20世紀後半には、市場原理に基づく自由競争の社会の実現を図ろうとする新自由主義(市場至上主義、自己責任のもとでの自由)の社会が描かれてきました。アジア・アフリカの国々は第二次世界大戦後に独立を果たし、今も政治的に不安定な国もありますが、多くは民主化を実現してきました。日本は、第二次世界大戦の敗戦を経て民主化が進み、高度経済成長の下でひたすら裕福な暮らしを目指し、それなりにモノが家庭にいきわたる様になりました。
  4. 資本主義の仕組みは経済格差問題を生み出すものであると当初より予言されてきたことでした。しかし、今日に至るまで、貧困問題、経済格差問題は解決されないどころか、世界中にどんどん拡大しつつあります。日本では、バブル経済崩壊後、現在に至るまで低迷する経済成長の社会が続いているだけでなく、世界でも最も進んだ少子高齢社会・人口減少社会となりました。裕福であるばかりか心豊かに過ごせる老後の生活は望むべくもなく、社会の二重三重の経済格差構造(都市と地方、正雇用と非正規雇用の経済格差)が社会をむしばみ、財政赤字と縮小する経済の下での社会保障制度に対する将来不安が増大してきています。
  5. 民主主義の意識が徐々に浸透し、また、経済が成長して暮らしにある程度の余裕のある社会が実現できてきた結果として、個々人も多様性と包摂さのある社会を求める様になってきました。そこには、①地球規模では、人口が増大し全ての人が同じようなものを所有するのは地球資源の無駄づかいであるという問題認識、②デジタル技術の普及(デジタル・トランスフォーメーション)と相まって、遊んでいる資産を有効活用して自分でも収入を得ようという新たな経済性の追求(シェアリング・エコノミー)、③日本にあっては、人口減少により経済規模自体が縮小し将来の不安に備えておかなければならないという節約志向など、といった意識の変化があります。

 

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