#251 高生産性組織の思考(状況に応じて内発的に変容する組織の特徴)

 筆者がまだ若く駆け出しの頃、時代は高度経済成長期の最終版の10年といった時期でしたが、当時、世界の最先端技術分野で世界一の製品を目指している工場の生産自動化システム開発に携わっていました。アメリカの競合相手企業の製品計画はどうだろう、生産技術の開発は次にどこまで進むのだろうと、当時の上司や同僚と情報交換して常にそうしたことを念頭において仕事をしていました。
 自分が遅れたら全体計画が狂ってしまう、壁にぶち当たったらどうしようと言った焦燥感は全くなく、とにかく前に突き進むために、問題が見つかったらその時点で自分で代替する解決案を考えて周りの関係する人達に提案し、いつまでならでえきるからと約束して日程調整までこなしていました。また、周りの人達も同じ問題意識をもって取り組んでいるのを知っていた(共感していた)ので、何かあったら私の方でもとれる対策を織り込んだり日程調整に応じたりしていました。まさに、日本的な集団主義であり、工場全体がチームとして一丸となって行動していたように思います。とは言っても、先のコラム(#249 日本人の思考様式(滅私) 個人主義に対する本質的な対立軸)に記したような滅私の思考はなく、そこには自分自身の思考があったように思います。

 以下の図は、先のコラム(#250 低生産性組織の思考(過去のやり方を断ち切れない組織の特徴))に示したPlanAに対する「高生産性組織の思考(状況に応じて内発的に変容する組織の特徴)」を整理したものです。

 
さて、当社では高生産性の働き方について個人の「自立と自律」を主張してきていますが、当時を振り返ったときの「自立と自律」を定義すると以下のようになります。

[自立]① 基礎となる技術を習得している  ② 顧客の業務知識を深く理解している(顧客の言葉を理解し、ニーズを共感できる) ③ 作業環境を構築できる(システム環境を構築できる)  ④ 仕事の段取りができる(プロセス、及び、プロセス間の関係を理解し調整できる) ⑤ 自力で完結できる(自力でこなせる、人に作業指示して完成させる)  ⑥ パフォーマンスやコストをマネジメントできる  ⑦ コンセプトメークできる(創造的なものの場合)  ⑧ モデル化できる(創造的なものの場合)
[自律]その人の専門性の範囲で、①自ら問題意識を持って行動し、②状況の変化に適応するために何をすべきかを判断し、③他者に働きかけて協働して対応し、④部門全体あるいは部門を跨いだ対応が必要なら、どうすべきかを上司に提案して、共同社会(コミュニティ)を維持するための義務を果たしていくこと。

 当時の工場の状況に戻りますが、世界最先端の技術で世界一を目指して取り組んでいた訳ですが、バブルが崩壊した途端に受注案件がストップし、新たな生産計画や生産自動化システムの開発にもストップがかかりました。以降、高度経済成長への取り組みは萎んでいき、ゼロサム市場下でのコストダウンが主な論点となっていきました。まさに、日本の失われた10年、20年、30年の縮図です。競争相手は自企業の組織の縮小(リストラ)です。

 一方、現在の企業は経済成長モデルではなく社会発展という役割を担うようになってきました。一企業の組織であっても、その中の個々の一人ひとりであっても、組織の中のことだけ考えれば良いという時代ではなくなりました。企業の経営者も、現場の一人ひとりにしても等しく視座を社会の発展に高めて思考しなければなりません。上記PlanBに記している「問われるのは社会に対するインパクトと結果責任である」とは、まさにこうした背景があるからです。
 そこで社会発展の視点から、現在求められる「自立と自律」を再定義すると以下のようになります。

[自立]①経済的に自立し、②様々な権利(人権)がその人に確保されて③個人の自由意志が形成され認識されて初めて「自立」と言える
[自律]こうした自立した個人が、④内発的に意見を表明し、⑤他者に対して提案し、⑥お互いの意見の相違を受け容れて、⑦自ら調整して実現していけるようになるのが「自律」していること

「自立と自律」は多義的な言葉であり、色々な立場で異なる見解があります。上記の定義は現時点での当社の定義に過ぎませんが、アンダーラインが示すことは、個人が「一市民として自立」するということを意味します。これはすなわち、経営者も現場の一人ひとりも等しく、組織の中で働いている人間である以上に、「一市民として自立」し、社会の中で生活する同じ一人ひとりとして社会を見つめ、社会発展への思いを共感しあって自分達の存在する目的に向って思考し、社会環境の変化ていく状況に即応して自ら内発的に変容していく組織になっていくということです。

 最近「副業」(企業から見れば副業、個人見れば複業)を解禁する企業が増えてきました。低経済成長下においては支払える賃金を抑えなければならないという事情もありますが、経営者からみれば、従業員が他の分野の企業で働くことで新たな視点でものごとを考えて社内にも取り込んで組織文化を刷新する機会にもなるとの判断があります。これは個々人が「一市民として自立」していって欲しいという意図の現れでもありると考えられます。
 とにもかくにも、これからの時代に私達に求められているのは「組織の中で滅私する」のではなく、「一市民として自立」して、社会に視座を高めて思考して、自らの行動のインパクトや結果責任を果たすために「自律」していることを実践していかなければならないということです。

サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一

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