#233 社会的課題による経済的損失の回避、低減、移転

 社会的課題について、これまでは経済的損失という視点ではあまり議論されることはなかった。例えば、地球温暖化の問題は、このまま放置した場合に起きると想定される事態に対しては被害額を算出することは比較的容易である。人口減少の問題にしても、人口が減った分と一人当たりのGDPをかけ合わせれば経済損失額は算出できる。生活保護を必要とする人の数に一人に支給される生活保護費をかけ合わせれば貧困に関わるコストを算出できるかも知れない。おそらく、マクロ経済の知識を持ち出せば、社会的課題を放置することによって余計にかかる費用(損害額)の殆どは算出可能であろう。

 社会的課題を放置することによって余計にかかる費用(損害額)が算定できれば、リスクに関わる経済性評価と同様に、経済的損失の回避、低減、移転に対する施策やその優先づけも可能になってくる。即ち、未来社会の価値を創造するという視点に立つならば、社会的課題による経済的損失の回避、低減、移転によって、どれだけの価値が失われずに済むかという評価が可能になるということになる。このことは、未来社会の持続可能な発展に対する取り組みについても、その時点からの未来価値を現時点に割り戻してく評価を可能にするという意味で、極めて重要な意味を持つ。

 しかし、個々人のメンタルに及ぼす影響も加味した人生を破壊されたことによる被害額を算出することはできない(裁判で獲得した損害賠償額がそれにあたるかも知れないが、事案の夫々に異なるであろう)。自立し自分の意志で行動していく意識が高まっていく将来の人達は、自分の利益や自我(エゴ、例えば、自己実現の欲求)に縛られることがなく、他者や社会全体に対しても思いを巡らせて、自立し自分の意志で行動していく様になる。マクロ経済の指標がどうであれ、周囲にいる人達の困窮に対しては、ボランティアや寄付だけでなく、一人ひとりがお互い様の気持ちで献身的に助け合う文化が定着していく。そして、マクロ経済の視点だけでなく、具体的にきめ細かい支援となっているか厳しい目で評価することができる様にもなっていく。

 社会的課題による経済的損失の回避、低減、移転への取り組みを金額に換算して、いくらしているからといって、きめ細かい具体的な取り組みをしたか、これからの社会にはその質が問われることになる。これからの経営においては、社会的課題解決をなおざりにはできないし、おざなりにもできなくなっていく。そうした費用をかけずに自社だけの持続的な成長を目指しても、そうした企業は持続可能な成長を遂げていくことはできない。

サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)