#229 経済的価値を創出する

 近代化(ポストモダニズム)の時代にける新規事業は、その市場性から評価される。こうした風潮は、脱近代化(ポストモダン)の社会になった21世紀にも変わりはない。市場性評価にしても販売戦略にしてもSTP/MMで考えるのが常であり、投資や融資の可否もSTP/MM/PL(Product Life cycle)に基づく投資回収性で評価される。

 一般に、大手企業は、企業ブランドもあり財務基盤も比較的強いと思われていることから、投資や融資も受けやすい。しかし、巨大化した組織を維持する固定費は大きく、安易に新市場開拓型のイノベーションには飛びつきにくい。未来社会の価値を創造するという発想では、その事業に投資することはできない。目の前の利益を求める株主が未来社会の価値を創造する事業に賛同する筈もない。

 しかし、既存の事業は、漸進的なイノベーションを続けたとしても、やがては廃れていくだけである。日本の人件費水準では、ローエンドの市場開拓型イノベーション戦略をとることは難しい。こうした状況を打開できる方策は、唯一、未来社会の価値を先読みして、新市場開拓のイノベーションを“Think Big but Small Start”で育てていくことである。ベンチャー企業は経営資源が乏しいために自ずとこの戦略をとらざるを得ない。

 “Think Big but Small Start”戦略のプロダクトは単発の利益を狙う訳ではない。市場を通して徐々に技術を磨き上げ、積み重ねて蓄積した「知」を差別化要因にして市場を制覇していく。そこに、未来社会の持続可能な発展につながる価値を創造しえたならブランド価値を高めることにもなる。

 この戦略の味噌は、“Think Big but Small Start”型のプロダクトを、一貫した未来社会の持続可能な発展のビジョンを持ち続けてバージョンアップしていくことである。そのためには、常に、要素技術を進化させていくロードマップを描いて取り組んでいくことである。かつて、インテル社の創業者の一人であるゴードン・ムーアが「ムーアの法則」を示した様に、また、米国の未来学者レイ・カーツワイルがシンギュラリティを提唱している様に、未来社会の持続可能な発展のビジョンに、深遠な法則を持ち込むことができれば、社会はそこに向かって動き出していく。

サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一

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