社会発展の条件

 人と人がお互いを尊重し合い、相互に協力しあって結びついていくことで社会の発展を実現し、自らも成長していくものです。そこで、何よりも社会が発展していくためには、自立した個々人が自由意志で行動していけること、かつ、その行動は思い思いでありつつも、共生し協働していくなかで自律的でなければなりません。

 「自立」と「自律」という言葉には多義性があり、一概に定義することはできません。そこで、当社では、①経済的に自立し、②様々な権利(人権)がその人に確保されて、③個人の自由意志が形成され認識されて初めて「自立」と言えると定義します。そして、こうした自立した個人が、④内発的に意見を表明し、⑤他者に対して提案し、⑥お互いの意見の相違を受け容れて、⑦自ら調整して実現していけるようになるのが「自律」していることの定義としています。

 そうした個々人の自立し自律した行動が、社会環境としても権利としても守られることによって、社会は発展していくことができます。そしてそれを実現するのが社会システムであり、技術革新によって確立されてきたプロダクト技術によって構築された新たな社会発展のためのプラットフォームがその新たな社会システムの形成と円滑な運用、すなわち、安全で安心で、公正で公平な、個々人が誰でも参加できるオープンな運営を支えていくことになります。

 

社会生活の維持と促進

社会発展の前提条件として、人々が社会の中で安全・安心に暮らしていけることが必要です。

  1. 経済システムの持続可能な成長
  2. 人々が社会の中で安全・安心に暮らしていくためには、何よりもまず、経済的に自立できていることが必要です。現在では、経済成長モデルでは経済的格差がとりわけ顕著となり、行政の生活保護に頼らざるを得ない人達も増えています。こうしたセーフティネットも必要ですが、何よりも、経済的に自立できなければなりません。さもなければ、人々は、今この時を生き抜くのが精いっぱいとなり、社会生活に余裕を失い、将来への夢も希望も失い、幸福に過ごしたいなどとは言ってはいられなくなるからです。

  3. 自然環境の生態系の再生
  4. 地球温暖化の問題は、現在の私達にも増して将来の人達の生存権を脅かすものです。自然環境における生態系の破壊も、私達には直接的にすぐには影響してこないように思えますが、生態系の循環のバランスが崩れていくことは、将来の人達の生存権を脅かす要因にもなると考えらえられます。また、人間は自然環境があることによって癒されて生きていくものです。自然環境の破壊は人々の心の癒しを奪っていくことにもなります。

  5. 医療システムの再生
  6. 医療システムは人々の生命や健康を守る最前線であり、また、健康を守ることは、私達のQOL(Quality of Life、生活の質)を維持し高めていくための前提ともなります。新型コロナウイルスによる感染症 (COVID-19)はパンデミックを引き起こし、世界中の多くの人の命を奪い、健康な暮らしを壊しました。経済活動が停滞して職を失う人や自殺する人も増えています。市中感染拡大(蔓延)を防ぐ防疫の措置と合わせて、感染が急速に拡大しても医療がシステムとして機能していけるようにすることが何よりも求められています。

多様な内発的活動の創出

社会の発展には、人々の自由な発想の下で多様な内発的活動が創出されていくことが必要であり、それらの活動は権利として守られ、社会システムによって相乗効果による好循環が生み出され促進されていかなければなりません。

人の普遍的権利の重視

  1. 全てのことの大前提として、人の普遍的権利は守らなければならない
  2. 人の普遍的権利は公正公平な法によってのみ守られる
  3. 公正公平な法の下では、人は平等でなければならない
  4. 人の普遍的権利の行使は第三者に監視されてはならない。人の普遍的権利の行使は第三者に干渉されたり、疎外されたりしてはならない

個人の自由意志の重視

  1. 個人の自由意志は守られなければならない
  2. 人は人との関わりの中で生きている。人は経済人であり、社会的存在であり、組織人である。人は組織人であると同時に、それ以上に自由意志を持った個人である
    • 人はある状況や置かれた立場、ライフステージに応じて、経済人にもなり、社会的存在にもなり、組織人にもなるものであり、一概にはその人を特徴づけることはできない
    • 人は利己的存在であるが利他的存在でもある。逆に、利己的存在、利他的存在であり続けることはできない
    • 人は本来、自由意志を持って自ら思考して、自らの意思を決めて行動する存在である。社会発展シナリオにおいては、人は組織人であっても自由意志を持って自ら思考して行動し、滅私であってはならない
  3. 人は自由意志を持った個人として行動する権利を有すると同時に、自ら滅私で行動することを選択する権利を有する
  4. 人は自由意志を持った個人として行動することも、自ら滅私で行動することも、他人から強要することはできない
  5. 個人の自由意志による行動、滅私による行動は監視されてはならない。いかなる第三者も、社会的圧力(同調圧力)を行使して、個人の自由意志による行動、滅私で行動することを干渉したり、疎外したりしてはならない

コミュニティ活動の重視

  1. コミュニティ活動の自由は守られなければならない
  2. 人が集い意思疎通を図るコミュニティを形成する空間としてリアル世界、サイバー世界、そのハイブリッド世界を選択する権利を有する
  3. リアル世界、サイバー世界、そのハイブリッド世界の空間の設置、運用、解散は、そこに参画する人達の個人の自由意志によって決めることができる
  4. リアル世界、サイバー世界、そのハイブリッド世界のコミュニティを形成する空間は法的に守られなければならない
    • リアル世界、サイバー世界、そのハイブリッド世界のコミュニティを形成する空間にある情報は、無断で第三者に閲覧されたり、漏洩されたりしてはならない
    • リアル世界、サイバー世界、そのハイブリッド世界の空間に参加する人はアバターでもよい。外部の人間がなりすましたアバターの参加は法的に禁止されなければならない
  5. リアル世界、サイバー世界、そのハイブリッド世界のコミュニティを形成する空間、及び、当該空間における行動は監視されてはならない。いかなる第三者も、コミュニティを形成する空間、及び、当該空間における行動を干渉したり、疎外したりしてはならない

倫理に基づく行動の重視

  1. 人の倫理に基づく行動の自由は守られなければならない
  2. 人の行動は道徳と倫理に基づかなければならない
    • 道徳や倫理は絶対的な存在ではなく、社会通念に左右されうるものである
    • 道徳や倫理は、権力者や為政者が自分の道徳観や倫理観で決めうるものではなく、またそれに加担する人達による暴力や社会的圧力(同調圧力)によって決められるものでもない
  3. 人は、過失、若しくは、意図した行動の結果として、他人を傷つけたり物的に損害を与えたとしても、それを法に基づいて償う機会が与えられる
  4. 他人の過失、若しくは、意図した行動の結果として、傷つけられたり物的に損害を与えられたりしたとしても、被害者やまたその親族等の関係者の個人の自由意志によってそれを赦すこともできる
  5. 人の倫理に基づく行動は監視されてはならない。いかなる第三者も、人の倫理に基づく行動を干渉したり、疎外したりしてはならない

経済活動の自由

  1. 人の経済活動の自由は守られなければならない
  2. 人は自由に経済活動に参加する権利を有する
  3. 人は個人の自由意志によって経済活動を選択する権利を有する
    • 人は経済格差によって公共公益的な経済活動に参加しうる権利を阻害されてはならない。但し、私的団体において既会員の推薦や入会資格に資する権利の売買の有無によって当該団体の経済活動に参加することを制限することは社会通念として可能である
  4. 人は経済活動にアクセスしていることを監視されてはならない。いかなる第三者も、人の経済活動を干渉したり、疎外したりしてはならない

成果物価値の重視

  1. 人の成果物価値を創造する活動の自由は守られなければならない
  2. 人は自由に成果物価値を創造する権利を有する
    • 成果物価値とは、成果物に対して支払われる対価としの価値である。経済取引で交換されるときの価格となるものもあれば、公益のものとして行政が社会コストとして支払うものもある。
    • 貨幣価値に置き換えることが難しいものもある。幸福のように値付けすること自体に意味をなさないものもある。
    • 成果物に対してある金額を支払うだけの価値を感じる人がオークションでその成果物に値付けをすることは可能である。入札制度では最低価格の成果物が競争入札に勝ち、フリーマーケットでは値引き競争になる場合がある。本当に価値のある成果物にはより高い価格評価がなされる仕組みが必要である。
    • 成果物価値における成果物とは工業製品であるとは限らない。ソフトウェアを設計するドキュメントやプログラム(ソースコード)、アプリケーションであるとも限らない。
    • 構築したシステム、提供した教育、提供した医療や介護、提供した市民や顧客へのサービス、街の清掃員の仕事(街の美化)、脱炭素への取り組みなど、全ての業務に関わる仕事の成果物価値である。
  3. 人は個人の自由意志によって成果物価値を創造することを選択する権利を有する
    • 人は経済格差によって成果物価値を創造しうる権利を阻害されてはならない。選択し創造する成果物価値は個人の能力、モチベーションといった個人に帰する制約によってのみに依存する
  4. 人は成果物価値を創造していることを監視されてはならない。いかなる第三者も、人の成果物価値を創造する活動を干渉したり、疎外したりしてはならない

文化創造の自由

  1. 人の文化を創造する活動の自由は守られなければならない
  2. 人は自由に文化を創造する権利を有する
  3. 人は個人の自由意志によって文化を創造することを選択する権利を有する
    • 人は経済格差によって文化を創造しうる権利を阻害されてはならない。選択し創造する文化は個人の能力、モチベーションといった個人に帰する制約によってのみに依存する
  4. 人は文化を創造していることを監視されてはならない。いかなる第三者も、人の文化を創造する活動を干渉したり、疎外したりしてはならない

時間・場所の束縛からの解放

  1. 人の時間の使用、居場所の自由は守られなければならない
  2. 人は自分で自分の時間の使用を選択し、その使用にとって適した居場所を選択する権利を有する
    • 労働の商品化、例えば、労働による時間拘束の対価として賃金を得ることは社会通念として可能である
    • 社会的価値の創出を促進するためには、成果物価値の商品化であり、成果物価値に対して対価が払われるようになければならない。その場合の対価は社会コストとなるが、社会発展にかかる投資ともない、成果物価値がその社会が享受することのできる社会的価値となる
    • 自分が自分の時間を使用するのに適した場所に移動するための手段は継続的に効率化されなければならない
    • 自分が自分の時間を使用するのに適したコミュニケーション手段は継続的に効率化されなければならない
  3. 他人がその他人の時間の使用を選択し、その使用にとって適した居場所を選択する権利が平等にあることを尊重しなければならない
  4. 人は時間の使用や居場所を監視されてはならない。いかなる第三者も、人が、自分が自分の時間を使用すること、その使用にとって適した居場所を選択すること、移動手段やコミュニケーション手段にアクセスすることを干渉したり、疎外したりしてはならない

情報への公正公平なアクセス

  1. 人の情報へのアクセスの自由は守られなければならない
  2. 人は情報に平等にアクセスできなければならない
    • 人の個人情報、政府や企業の一部の機密情報はその組織や団体、個人に属し、第三者からのアクセスは制約される
  3. 自分の個人情報は自分だけのものである
    • 自分の個人情報は個人の自由意志によって守秘される。また、他人や第三者に自分の個人情報をアクセスし閲覧し、使用し、改変し、第三者に提供されることを選択する権利を有する
    • 他人が自分の情報を勝手に閲覧し、使用し、改変し、第三者に漏らしてはならない。また、他人の情報を勝手に閲覧し、使用し、改変し、第三者に漏らしてはならない
    • 第三者が公共の目的に沿ったとしても、他人の情報を閲覧し、使用し、改変し、さらなる第三者に漏らしたことは、その個人に適切に開示されなければならない
  4. 人は公開された情報についてアクセスしたことを監視されてはならない。いかなる第三者も、人が、公開された情報についてアクセスすることを干渉したり、疎外したりしてはならない

教育機会への公平なアクセス

  1. 人の教育機会への公平なアクセスの自由は守られなければならない
  2. 人は教育機会に自由にアクセスする権利を有する
    • 教育は単なる職業訓練や仕事のノウハウを身に着ける場ではない
    • 教育の本質は、教育を受ける者が自由意志によって人格を形成する機会である
    • 教育の本質はまた、教育を受けるものが自由意志によって社会で自立して生きていけるための、そして社会活動を通して社会の発展に貢献するスキルを獲得する場である
  3. 人は個人の自由意志によって教育機会を選択する権利を有する
    • 人は教育機会にアクセスする権利において平等であり差別されてならない
    • 人は経済格差によって教育機会にアクセスしうる権利を阻害されてはならない。選択し創造する成果物価値は個人の能力、モチベーションといった個人に帰する制約によってのみに依存する
  4. 教育を通して形成した理解や認識は自己に帰属するものであり社会の中で平等に扱われなければならない
    • 他者が教育を通して形成した理解や認識はその他者に帰属するものであり、自己が形成した認識と同様に尊重し、社会の中で平等に扱われなければならない
    • 教育を通して形成する理解や認識は、他人に干渉されたり、一方的な手段によって批判されたりしてはならない
    • 自分が教育を通して形成した理解や認識を社会の中で使用し、または、使用しないことを選択する権利を有する。同様に、他人が教育を通して形成した理解や認識を社会の中で使用し、または、使用しないことを選択する権利を有する。他人が教育を通して形成した理解や認識を干渉したり、疎外したりしてはならない
    • 自分が教育を通して形成した理解や認識を無断で引用してはならない
  5. 人は教育機会にアクセスしていることを監視されてはならない。いかなる第三者も、人が、教育機会にアクセスしていることを干渉したり、疎外したりしてはならない

結果責任の重視

  1. 人の行動は結果責任を伴う
    • 人の行動として結果責任を問いうるのは、社会の中で平等に生きていくに必要な教育を受けて人格形成され、社会の中で自立して生きていくだけのスキルを獲得した人に限られる(未成年者や教育を受ける機会を得られなかった人の結果責任は制限される)
    • 負うべき結果責任は、その人の社会の中において有する権限に応じて有限に課される
    • 負うべき結果責任は、分業によって担った役割に応じて有限に課される
    • 経済活動、例えば、投資や事業に失敗しても、その失敗した人の結果責任はその経済活動に対してであり、その人の人権を奪うものではない。また、その失敗した人が担うべき結果責任を果たしさえすれば、新たな経済活動に平等に参加でき再帰する権利を有する
  2. 人の結果責任を伴う行動は個人の自由意志に基づくものであり、他人や第三者に強要されたり、干渉されたりしてはならない
  3. 人の結果責任を伴う行動は第三者に監視されてはならない。いかなる第三者も、人の行動に伴う結果責任に干渉したり、その責任を誇張したり、疎外したりしてはならない

社会発展を阻害する要因

逆に、社会発展を阻害する要因としては、以下の項目を挙げることができる。

  1. 倫理を欠いた行為
  2. 既得権益による利権の構図

なお、上記については、Trigonal Thinking(TM) の[多様に][懐疑的に]において詳細に分析することになります。

 

『社会発展の条件』にご関心のある方は こちらより お気軽にお問い合わせ下さい。あるいは、info@clem.co.jp  サステナブル・イノベーションズ株式会社宛にご連絡下さい。

 

【補足】

社会システムとは

ここで言う社会システムとは、社会発展をシステムとして実現させうるシステムである。それば経済システムであるばかりでなく、その社会の道徳観念に基づく倫理システムとしても機能しなければならない。また、その社会で暮らす人々の合意形成によって成り立つシステムでもなければならない。  ※さらに詳細は「社会システム」のページをご参照下さい。
 

【用語の定義】

組織人モデル

 組織人モデルは、自分が属してきた組織を守ること、これまで守ってきた組織の利益や既得権益を守ることを最優先に考える人達の思考モデルです。近代化における資本主義社会においては経済人モデル(人間は利己的な生き物である)という思考モデルが一般的でしたが、この組織人モデルでは自分の利己的な利して益を度外視して(すなわち、滅私して)、組織全体としての利己的な利益を守ることに徹しています。利己的であることを考えれば広い意味で組織人モデルは経済人モデルの範疇に入るのかも知れません。
 人間は感情の動物とも言われます。人は夫々に生きている社会の道徳通念や倫理観に基づいて形成された正義感で思考してもいます。これは倫理人モデルとも言われます。すこし誇張して言えば、「心で痛みを感じ喜びを分かち合える感覚」を土台として『人の普遍的権利』を考える人達のモデルです。
 しかし、人は一面的に考えて行動している訳ではありません。その時々の状況と置かれている立場に応じて、経済人モデル、倫理人モデル、組織人モデルの間を移り替わりながら生きています。自分に人夫々の生き方や人生観、ライフステージにより重要と感じることで優先度も変わっていきます。対人関係におけるコンフリクトから怒りに任せて突如として異なる立場をとり頑固になることもあります。

滅私

ことば通り解釈すれば、一般的には「私利私欲を捨てて思考し行動すること」という意味で使われています。当社でもこの解釈に基づいて『滅私』という言葉を使用しています。

個人主義

個人主義は、ヨーロッパ社会で13世紀頃に芽生えて長年の間に培われてきたものと言われています。その意味で、人間は利己的な生き物であることを標榜した経済人モデルとは歴史的経緯があるという意味で若干異なるものでもあります。むしろ、日本人の滅私の思考に対しての対立軸となるものであると考えた方が良いかも知れません。当社では、個人主義の歴史的背景に基づく解釈は留保し、大雑把に「自分の権利を大事にする思考」と解釈して使用しています。ただ、自分の権利を大事にすると同時に「他者の権利を尊重するのが個人主義であるとも認識しています。ここが日本人の滅私の思考と大きく異なる点でもあります。