イノベーションとは

今あるパラダイム(思考の枠組み)の下で起こす新事業の開発とは異なり、イノベーションは、①新たなコンセプト、新たな技術、新たなビジネスモデル等を、②新たなビジネスのプラットフォーム(基盤)として社会に普及させて、③市場の競争環境のみならず社会的風土や社会システムの発展を促し、④そこから新事業を持続的に創出していくことのできる新たなパラダイムを生み出していくことと当社では定義しています。
 
 イノベーションは、そもそもは経済成長のための理論から導き出された概念です。新商品が新たな需要を創り出し経済が成長していく一方で、需要が満たされてくると経済成長は鈍化し始めるため、それまでの事業を変革して、それまでの市場を一変させる新たな基軸に基づく商品を生み出していくことが必要になります。
 すなわち、イノベーションは不連続に、かつ、市場の創造的破壊をともなって起こるものでありと言えます。しかし、だからといってイノベーションは何もないところから新たなものが突然出現するというものでもありません。そもそも、イノベーションを起こしうる変革は既存事業が作り上げたビジネス環境の上に新たな創意工夫が積み上げられて実現されなければ市場を形成することはできません(新結合)※1。
 

※1 『経済発展の理論(上下)』, シュムペーター(J.A. Schumpeter),塩野谷祐一, 中山伊知郎, 東畑精一(共訳), 岩波書店, 1977. (“Theorie der Wirtschaftlichen Entwicklung, 2.”,1926.)を参考に定義したものです

 

イノベーションは社会発展という社会現象である

 今は、成熟社会であり低経済成長の時代です。ものやサービスが街中に溢れ、新たな需要はすぐに飽和してしまうというのが成熟社会であり、どんなに変革しても市場を根底から変えるほどの力はなく、経済成長はかつてほどには見込まれないまま、低経済成長の状態が続いています。
 事業者の立場に立てば、変革をするということは経営上の意思であり、イノベーションは事業者が起こすものであると考えることができます。
 しかし、企業に社会的価値の創造が求められる社会にあって、イノベーションは、経済の成長を目的とした新結合による変革である以前に、社会の発展を実現していく変革であることが求められるようになってきています。
 
 ここで、イノベーションの一側面である技術革新について考えてみましょう。技術革新はとかく夢物語のように描かれますが、それでも、経済効果として測定することはできます。 しかし、技術革新によって社会システムがどれほどに進化し、社会的風土がどの様に変容したかについての評価は見過ごされがちです。とは言え、社会価値をどのように捉えるかは、あまりにも漠然としています。
 そこで、イノベーションを客観的に評価するとしてどうしたらよいかというと、当社では、社会に起きた様々な現象(社会の発展という社会現象)を捉えるしかないと考えています。
 

未来社会へのビジョンを描き出してイノベーションを興す

 イノベーションという社会現象を巻き興していくために、どんな変革をすれば良いかという疑問が湧いてきます。
 先に記した様に、これからの時代におけるイノベーションは、社会システムを進化させ、社会的風土を変容させていくことが求められています。すなわち、社会の未来像をストーリーとして描き出していくことが求められているということになります。そして、そのストーリーとして描き出されたものが、これまでに称されてきたビジョン、とりわけ、未来社会に向けたビジョンであると言うことができます。
 
 イノベーションを巻き興していくためには、未来社会に向けたしっかりとしたビジョンを描いて、そのストーリーに沿った変革をしていくことが必要になります。
 

ビジョンに立ちはだかる壁

 人には、目の前にあることや、社会で共通に認識されている情報、確立された知識に基づいて考える習慣が、子供の頃から教え込まれ潜在意識の奥底にまで染みついています。
 しかし、これからの社会に求められるイノベーションを巻き興していくためのビジョンは、未来社会に向けて描き出されたものです。目の前のこと、社会に知れ渡っている情報、既存の知識ばかりに囚われていては、あるべき未来社会を俯瞰したレベルに達することはできず、未来社会の発展としう社会現象であるイノベーションを巻き興すことはできません。
 

 

事業を起こすこととイノベーションを興すのとでは大きな違いがある

 ビジョンを描いてイノベーションを巻き興すことと、事業を起こすこと、すなわち、事業計画や利益計画を立てることは全く異なるものであり、全く別次元の発想が必要になります。
 ビジョンは理念ではなく、理論化され共有された経験知に基づく予見でもありません。むしろ、経営理念を掲げて、心の奥底から実現したいことです。当然のことながら、周知の知識をどんなに積み上げても未来社会を描いたビジョンにはなりません。それは未来に向けてなすべきことの説得力のある説明であり処方箋にしかならなりません。
 また、世界中に溢れているデータをいくら分析しても、未来社会を描いたビジョンにもならりません。それは過去の事象の理解の仕方にしか過ぎないからです。
 
 現実の社会では、目の前にある問題を解決することが常に求められ、未来社会として描いたビジョンを実現しようということにはならなりません。むしろ、目の前にある問題の解決が迫られる状況においては未来社会のビジョンなどはどうでもよいと敬遠されてしまうことの方が多いでしょう。新しい技術を使って未来社会を描いたとしてもビジョンにはなりえません。もし、そうしてしまうと、新しい技術の利便性や経済性の方が、現実的な関心事となってしまいます。
 
 人には大義があります。社会の問題を解決したいとか、社会の発展に貢献したいとか様々ですが、大義だけではどんな世の中にすべきといった理想論になってしまい、未来社会に向けた実現の道筋が描かれません。
 

イノベーションが新たなイノベーションを巻き興す

 イノベーションが、新結合によって創造的破壊をともないながら不連続に興る社会発展の現象であるということは、ひとつの巻き興されたイノベーションが次のイノベーションへと連鎖して巻き興されていくものであると言うこともできます。
 
 冒頭に記した様にイノベーションは経済成長の理論です。イノベーションの連鎖は、新たな産業構造を巻き興し、社会構造の変革をともないながら新たな雇用を生み出し、新たな経済成長の原動力となっていかなければなりません。当然のことながら、未来社会にとって価値のあるビジョンとは、このイノベーションの連鎖による社会の発展と経済の成長を想定したものとなります。
 

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