超成熟社会(ものの充足より心を満たすストーリー)の社会になる

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高度経済成長期には、画一品であれ、とにかく生活に必要な製品が欲しい時代だった。家庭にも店舗にも商品が溢れ、新機軸の製品もすぐに競合事業者が追随してまたたくまに需要が満たされてしまうようになると、経済成長は緩やかになり成熟経済期へと入っていく。経済の成熟化は同時に社会の成熟化にもつながり、人々は利便性より個性を重視し多様な生き方を模索する様になった。 多様な生き方というニーズを満たすには、企業側としても、それはこんな生き方だろうというストーリーを提案し、ストーリー性に訴求したマーケティング手法を編み出していかなければならなくなった。「コトの消費」と言われて久しいが、それは、嬉しいコト、楽しいコト、幸せを感じるコト、至宝の時間を過ごせるコト、即ち、モノではなく心を満たす出来事を演出することに他ならない。 日本人は、節電や節水、ゴミの分別収集の習慣、リサイクルへの意識の高まりから、モノを大量に消費して使い捨てるのではなく、資源を大事にする「もったいない」という感覚を社会の中で培ってきた。阪神・淡路大震災を機にボランティア活動に参加する人も増えた。環境問題や貧困問題などの社会問題に心を砕いて、社会的課題の解決に関わることに自己の存在意義を追求する様にもなった。こうした変化は、「コトの消費」から「自己の存在目的の追求」へと人々の意識が高まってきたことを意味する。 契約に基づく個人主義が染みついている海外の人たちと比べ、日本人には、他者に対するきめ細かい心遣いやお互い様の気持ちで献身的に行動する習慣が身に染みついている。「情けは人のためならず」(巡りめぐって自分に返ってくる)という故事もあるが、お互い様の気持ちには、今は損しても後で得をしようという下心があるというよりも、平等に苦労するという思惑がある。マズローの「自己実現の欲求」は自己の欲求を満たそうという心理であり自我を捨てた心境ではないが、「自己超越の欲求」は最上位の欲求とされ、トランスパーソナル心理学で言うところの「ビジョンロジック」となると日本人の心情として近しさを感じる。 超成熟社会の社会は、日本人的な、他者に対するきめ細かい心遣いやお互い様の気持ちで献身的に行動する社会、自己の存在目的を追求していく社会(あるいは、「自己超越の欲求」を満たす「ビジョンロジック」によって成り立っていく社会)である。

【認識すべき課題】 (時代背景、社会問題と背景要因)

  1. 社会全体に生活に必要なモノがゆき渡ってくると需要量が減少していく。その結果として、需要と供給のバランスが崩れ、商品の販売価格も低下していく。しかし、人々はモノを購買する動機を失っている状況では、需要の拡大は見込めず経済成長が停滞していく。
  2. 少なくなった需要を刺激するためにどの企業も様々な手を打つことになる。そうして喚起された需要を目指して多くの企業がなだれ込むが、開拓された需要の総量は小さくすぐに供給過多となり市場は衰退していく。そうした悪循環を繰り返すうちに、企業は投資した資金を回収できないまま疲弊し、新たな打ち手への投資意欲も減少していく。こうして、経済成長は停滞し、経済の成熟化の時代に入っていく。
  3. 経済が成熟化した社会において、人々はモノには充足感を持っており購買意欲も湧かない。また、経済の成長が停滞することで、将来不安も高まっていくために、より一層、節約志向に向かっていく。
  4. モノの贅沢な消費に飽き、節約志向が高まる一方で、人々はささやかな充足感を求める様になり、自分だけの心豊かさを求める様になる。経済の成長期には合理性や利便性ばかりが望まれるが、心豊かさを求める社会では合理性や利便性以上に、人間関係や文化、自然環境の豊かさを求め、より質の高い社会のあり方を求める様になる。より質の高い社会のあり方を求めることにより、社会は成熟化していく。
  5. より質の高い社会のあり方を求めるといっても、個人の人生観や好みは千差万別であり、状況に応じても移ろうものでもある。そこには、個々夫々にシーンがありストーリーがある。成熟社会が進展していくとストーリーの質も重視される様になる。

【未来における社会的価値の創造】

  1. 超成熟社会においては経済成長(成熟経済)も停滞している。また、超成熟社会においては、高齢化が進むだけでなく少子化も進んでいく。需要そのものも、子供中心、若者中心ではなく、高齢者向けが中心となっていく。
  2. より質の高い社会においては、経済性や利便性以上に社会性に訴求する企業の価値が高まり、社会性に訴求する商品だけが生き残っていく。
  3. より質の高いストーリーは個々夫々に千差万別であり、そこでの商品(サービスとサービスを実現するグッヅ)も多様で個性に訴求するものでなければならない。


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