投資や融資、公共投資、補助金や助成金に頼らず産業を進化させるシステム

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20世紀は大量生産・大量販売・大量消費という工業化によって近代化していく時代だった。それは、儲かる事業に投資して産業化を図っていくという発想に支えられ、その一方で、利益を出せない生まれたての事業(将来利益を生み出し得る有望な事業)については補助金を出して公的資金により支援していくという発想の政策がとられてきた。社会生活を支える共通の基盤は、直接、利益を生み出し得ない分野であり、そこには公共投資が必要となるが、公共投資は経済活性化や雇用創出の手段として使われてきた政策でもある。 こうした20世紀型の産業はキャッシュフローが全てだったが、21世紀になるとキャッシュフローを生み出す源泉がモノではなく知識に移り、大量生産・大量販売・大量消費によって利益を生み出してきたビジネスモデルは時代遅れとなってきた。人々が情報や知識をやりとりする情報通信技術はローエンドの漸進的イノベーションが支配する産業分野であり、当然のことながら、そこでは低価格競争が進んでいくしかない。今や、低価格の通信料の下で動かすことのできるアプリケーションが多くの収益を生み出している。そして、そうした分野に人(アプリケーションを構築する知識を持った人)が集まり、投資家の資金もそこに集まっていく。 しかし、アプリケーションというソフトウェアの開発は、大勢のプログラマーが労働集約型の産業として、大量生産・大量販売・大量消費の発想で働いているというのが実態である。すなわち、知識そのものが価値を生み出しているとはとうてい言い難い。一方、高いスキルを持ったデザイナーは、企業に属さずフリーランスとして収益を得て生計を立てている。こうした人達は自分の持っている磨き上げたスキルや深い知識、匠の技を持っている。 20世紀型の産業の下で成長してきた企業は、高い固定費に喘いで、新たな産業を生み出す力を失いつつある。一方、新たな発想のアイデア、磨き上げたスキルや深い知識、匠の技を持つベンチャー企業やフリーランサーは身軽であり、知識を価値に変えるビジネスモデルで色々なことに挑戦することができる。21世紀のこれからの社会を支えるのは、こうした人達が起こす産業であり、ベンチャー企業やフリーランスを活かして経済成長を実現していく社会の仕組み、すなわち、新たなタイプの産業を進化させるシステムの構築が求められている。


【認識すべき課題】 (時代背景、社会問題と背景要因)

  1. 本来、事業を育成し社会の発展に寄与していくべき投資が、儲けを目的とした投機へと走り、それが経済格差を生み出していく。
  2. これまでは国が公共投資を行うことで経済刺激策としてきた。この場合、社会的資本財である社会インフラへの投資に偏ってしまう。
  3. 過去における景気刺激策として発行された国債等の借金が膨れ上がり、財政の悪化を招いている。
  4. 軍事分野への巨額の投資が行われることで、世界中に武器が拡散していく。
  5. 少子高齢化や高度医療化により社会保障費が増大し、悪化している財政の負担となっている。
  6. 国や地方における産業育成のための補助金や助成金の制度は必要であるが、補助金や助成金に頼る民間企業の体質が日本企業の競争力低下を招いている。
  7. 低賃金によって人件費を削減し商品の価格競争力を競うことで、経済格差を生み出していく。
  8. 銀行による融資も、本来は事業の成長を支援する仕組みである筈が、焦げ付きを恐れるあまり、経営の安全性、事業計画の形式的完備性、担保の有無等により融資の可否や利率が決められてしまう。
  9. 大企業による投資の仕組みは、ベンチャー事業の新たなビジネスの創出の芽を摘む場合がある。
  10. グラミン銀行やクラウドファンディングの新たな手法が生み出されてきている。
  11. これまでの様にモノを作って売ればよいというのは通用しない社会となっている。地球環境の保護や循環型社会化へのコスト負担も大きくなっていく。
  12. 日本におけるベンチャー事業への投資は規模が小さく、資金難がその事業が大きく成長していくための足枷となっている。

【未来における社会的価値の創造】

  1. 本来、事業の回転により新たな事業の創出を行っていかなければならない。しかし、それではディスラプティブなイノベーションを生み出しにくい。社会の発展と未来社会における価値創造の視点から、ディスラプティブなイノベーションの評価方法を確立する必要がある。
  2. これからは、未来社会の価値を創造する金融経済システムが必要である。
  3. 公共投資、補助金や助成金制度に頼らず、民間企業が事業を回転させていくことで事業を拡大していく、すなわち、民間企業の自立が必要である。
  4. 地球環境の保護や循環型社会化へのコスト負担、低賃金により実現した安価な商品の利益の分配等、国や地方自治体、企業や投資家、消費者がコストをどの様に負担していくか、コストバランスの見直しが必要な社会となっていく。


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