一人ひとりの問題認識が企業を動かしていく

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高度経済成長期の大量生産・大量販売・大量消費時代の産業は大規模資本を集中させた労働集約により成立していた。それはまた、顧客を大衆化してマクロに捉えたマーケティングが通用した時代でもあった。この時代の顧客は生活に必要な画一品を求めていたため、顧客の創造という概念も、暗黙的に、大衆としての顧客を創造するという意味合いが含まれており、供給者側も大衆の求めるニーズを創造し、マクロマーケティング(例えば、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)に沿って販売網を敷き、個々の顧客も大衆のニーズに自分のニーズを合わせて規格品を購入させられていた。この時代は、工業化による近代化を実現して利潤をひたすら追求するマネジメントが要求された。 工業化による近代化を求める時代が終焉しポストモダンの時代に入ると社会は多元化していき、個性が重視される多様瑛の時代となった。また、成熟経済となり高齢化社会の進展とともに社会が成熟化していくと、低価格の規格品と若干高くても求められる自分らしさを実現する商品の二極化が進行した。グローバル化が進展し、前者については新興国におけるローエンドの破壊的イノベーションが世界市場を席巻し、それまでの日本の経済をけん引していた多くの産業が衰退し始めた。後者に関しては、一つはハイエンドの顧客の要求を満たす漸進的なイノベーションを追求することとなったが、日本の製造業はガラパゴス化しているとも揶揄され、この分野への取り組みは成功したとは言えない。今一つは、付加価値を創造するサービスの知恵を競うこととなったが、きめ細かなサービスを提供するには、大規模資本を集中させた労働集約型の産業を個々の顧客の多様なニーズに合わせていくためには固定費が邪魔となりうまく転換されてはいない。 一方、80年代に入った頃、地球環境を保護する思想が世界に広がり、日本の技術力は環境に関する取り組みにも成功し、世界の中でも先進を走っていった。しかし、再生可能エネルギー分野、例えば、太陽光発電技術や風力発電技術は、原子力発電や化石燃料を使った旧来型のエネルギーからの発想の転換が国の取り組みとして遅れたことが原因で、欧州や中国企業に大きな遅れをとるに至っている。労働環境の改善といった人権問題についても日本人の感覚は鈍く、労働力確保を眼目とした働き方改革という文脈で人権問題にようやく取り組みに至るようになった。この分野での日本のマネジメントシステムはうまくは転換が図れないまま停滞している。 地球環境保護や人権問題への取り組みは世界規模で広がっており、顧客もこうした分野での取り組みを軽んじている企業の製品の不買もジワジワと広がり、投資家もこうした問題にきちんと取り組んでいる企業のリスクは低いとして自己の損失を抑えるためのESG投資に傾きつつある。企業も、経済活動、環境への取り組み、人権の取り組みを統合した決算書の作成(統合レポート)を積極的に取り入れる様になり、現在は、事業を通した社会的課題解決の競争の時代に突入してきている。 こうした社会の変遷にあって、大量生産・大量販売・大量消費時代の産業は大規模資本を集中させた労働集約の時代の考え方のままに生産性を捉えていては時代の流れに取り残されていく。多様な顧客のニーズにきめ細かく応えていくためには、また、社会的課題に困っている人に寄り添って解決していくためには、大衆として捉えた顧客の創造を図っていく経済合理性の論理でのマネジメントシステムでは機能不足である。 そもそも、従業員も社会の中で生きている一人ひとりであり、夫々の人生において個々のニーズを持って生きており、また、個々の問題として社会的課題に関わって生きている。インターネットの普及により、経営者だけが高い意識があり、経営者だけが社会を知っていて、経営者だけが指導力があるという社会ではなくなっている。むしろ、具体的な社会的課題に直面している従業員の方が経験知を多く持っているという場合が多い。多様性と言えば雇用機会の均等化、昇進の均等化と言われる。しかし、雇用機会の均等化、昇進の均等化をすれば多様であるという訳ではない。様々な価値観や具体的な問題意識を持って生きている人達の経験知や意見、要望を事業に活かしていくことが、本当の多様性を生かした経営と言える。 これからの時代に向けては、IoTによるビッグデータの分析を活かしたロボットや人工知能技術が進み、シンギュラリティも間近いという予測も主張されている。個々人の目の前のニーズを満たしていくばかりでなく、また、個々の社会的課題解決に取り組むばかりでなく、未来社会の価値を構想し新たなディスラプティブなイノベーションを興していかなければならない。一人ひとりの問題認識が社会や市場で求められているコトを捉え、自立して自律的に新たな価値を創造していかなければ、企業の独自性のある差別化価値を生み出していくことはできない。そうした意識の高い多様な価値観やスキルを持った人たちは、独自性を活かし、かつ、自分だけでなく他の人たちの考え方も受容し統合してより高度な解を導き出していく行動ができる。企業の中での組織のマネジメントが果たすべき役割も、皆が、共感して同一の方向に進んでいけるビジョンを描くこと、スムーズに行動できる環境(すなわち、器(うつわ)、組織文化、社会的システム)づくり、及び、企業全体として利害関係者(投資家や株主、金融機関、取引先)と調整し最適化させていくことに焦点ら絞がれていく。


【認識すべき課題】 (時代背景、社会問題と背景要因)

  1. 従業員も社会の中で生きている一人ひとりであり、夫々の人生において社会的課題に関わって生きている。
  2. インターネットの普及により、経営者だけが高い意識があり、経営者だけが社会を知っていて、経営者だけが指導力があるという社会ではなくなっている。むしろ、具体的な社会的課題に直面している従業員の方が経験知を多く持っているという場合が多い。

【未来における社会的価値の創造】

  1. 多様性と言えば雇用機会の均等化、昇進の均等化と言われる。しかし、雇用機会の均等化、昇進の均等化をすれば多様であるという訳ではない。
  2. 様々な価値観や具体的な問題意識を持って生きている人達の経験知や意見、要望を事業に活かしていくことが、本当の多様性を生かした経営と言える。


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