ビジョンを描く

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企業経営においては、まず、組織の中で活動する人達の共通の目的となる “ビジョン” を定める必要がある。

ビジョン は “経営理念” ではない。 ビジョン は、「どんな世界が実現する」「こんな世界を実現させたい」という長期的な視点で描いた将来像(あるべき姿、ありたい姿)である。また、ビジョン は経営の目的であり、組織の中で共有される全ての活動が実現を目指していく共通の目的となる。

ビジョンを描くための心掛け



  • ビジョン を創造するためには、何よりも、社会全体の視点で社会の変化を捉えることが重要である。
    • 社会の中で あるべきことがありえてない ということは、すなわち、そのこと自体 現時点で、社会が何らかの問題を抱えている ということを意味している。
      • 社会問題を解消する上で妨げになることが社会的課題である。
    • あるべきことがありえてない ことの真の問題は、その深層に隠された問題が認識されないことである。
      • ここには 問題認識の問題 がある。 この場合、問題の本質の解決につながらず、社会の発展にもつながらない。 良かれと思ったことであったとしても仇となり、最悪の場合、未来に取り返しのつかない禍根を残すことにすらなる。


  • ビジョン の創造において、最も注意しなければならないことは 問題認識の問題 の放置である。
    • 問題認識の問題 を放置したまま ビジョン が創られることがある。単に、そこに思考が至らなかったということもあるが、敢えて、あるべきことがありえてない ことを放置しつつ、現実問題として今の時点の倫理感、理論、技術レベル、資金力では実現できないというコンセンサスもありうる。
      • この場合は、“取り敢えずのビジョン” が創られることになる。問題認識の問題 が放置された ビジョン の寿命(有効期間)は短い。 
    • 経済性の追求合理化にしか目を向けていない ビジョン は、社会や顧客から疎まれる。


  • ビジョンある瞬間に舞い降りてきた閃きがきっかけとなって描かれることが多い、しかし、ビジョン は一日にして創り上げられるものではない。また、ビジョン は作文でもない。
    • ビジョン には揺るぎない “基軸” が必要である。
      • “基軸” (基軸:物事の基本・中心となるもの。機軸:活動の中心。広辞苑第六版)とは、ビジョン の軸となる “信条”、“信念”、“人生観”、“世界観”である。
    • “基軸” が動くと全てが動揺してしまう。 “基軸” を “経営理念” として明文化し、組織の中で常に共有しておくと良い。
  • ビジョンには、“課題を解決していく方向性とアジェンダ(予定表)が示されなければならない。 アジェンダは、社会や市場がどう捉えるか、顧客がどう意味づけるか、従業員や取引先の人達がどう納得し、関わっていこうと思えるかといった点で共感でき、心から信じて運命を共にして取り組んでいこうと思える内容でなければならず、strong style="color: #028760; font-weight: bold;">ビジョン</strong> の価値を左右する試金石となる。
  • ビジョン (経営の目的)を実現させるためには、幾多の課題を解決していかなければならない。そして、そのためには目に見えるマイルストーン、すなわち、目標が必要である。
    • 目標は「いつまでに」「何が実現できていなければならないか」を示したものであり、「誰」(主体的に活動する人達)のコミットメントを伴う。目標が明示されていない ビジョン は、単なる “夢”(見果てぬ夢)でしかない。
    • 目標と現実のギャップを問題と捉える場合もある。そしてこの問題を引き起こしている隘路(目標と現状の間にギャップを生じさせる阻害要因、ボトルネック)を課題と捉える場合もある。
      • この場合の問題課題は、思考の対象領域を限定した、あるいは、ある前提を設定した上で成り立つ「(限定的な)問題」であり「(限定的な)課題」と言える。



今ある社会の趨勢


1.大量消費から一人ひとりのその場その時に合わせた満足、一人ひとりの生き方の実現へ

経済が成熟化した人口減少社会にあって需要は伸びず縮小傾向にある。社会も成熟化し、大量消費から一人ひとりが自分なりの生き方を大事にして心豊かな暮らしを求めている。

・社会、市場は、常に急速に多様に変化し、技術革新による変化に顧客ニーズも刺激されて変化している。
・技術革新による変化と顧客ニーズの変化が社会や市場を刺激して、新たな変化を引き起こす。

経済成長時の社会は“ものの消費の時代”だった。成熟社会では“量より質の時代(Quality of Life)”であり、更に今、一人ひとりが自分なりの生き方を実現するための“多様性の時代”に向けて大きく変化しつつある。

・“多様性の時代”では“大量生産による低価格化の実現”という経済モデルでは対応できない。
・“多様性を低価格で提供できる新たな産業構造や働き方の実現”という新たな経済モデルが必要である
・新たな経済モデルを支えるプラットフォームを創造していかなければならない。

新たなプラットフォームでは “画一的なものの大量消費” からの発想を転換し、① 一人ひとりが自分なりの生き方を実現する、②その場その時に合わせた満足を実現する こと が提供される。


2.情報と知識の活用を中核とした技術革新





心に留めておかなければならないこと 社会にある趨勢の深層


1.20世紀の発想に基づいて発展してきた社会の限界

高度経済成長期の発想に基づく社会通念、社会発展のための政策モデルに限界が見えてきている。そして、国などの枠組みで考えられてきた統治に対する反発から地方の独立意識も高まり、様々な地域で様々なリスクが巻き起こっている。

・右肩上がりの成長社会から、ものが社会に行き届きもの余りによる成熟社会へ
・少子超高齢社会、人口減少社会化
・社会保障への負担増大
・巨大箱物や大規模イベントへの投資による景気浮揚の限界
・ゾブリンリスクに揺れるグローバル社会、独立を求める地域政府


2.経済の競争原理に基づく社会通念、共通の価値観の限界

遠く離れた国や地域の経済問題が瞬時に世界中を駆け巡り、為替相場の急激な変動、株式市場の乱高下、金利の変動等を招いている(坩堝化して混迷するグローバル経済)。サブプライムローン問題やリーマンショック、ギリシャ危機問題などはその典型的な事例である。ただ、それは一過性の問題ではない。長い目で見れば、競争原理に基づく経済発展モデルの限界(経済格差社会、若者の貧困問題、高齢者の貧困問題)を引き起こし、政策金利や量的緩和策により金融市場に溢れたマネーが投機資金となって庶民の生活を脅かし、公共投資による景気浮揚策がやがては国や地方の財政破綻につながるといった問題を引き起こし、挙げ句の果てに、低経済成長下での緊縮経済政策を余儀なくされることによりが市民生活を脅かされている。


3.国から地方への主権の移動

組織の効率性や権力の争奪に明け暮れる官僚機構が社会全体にとっての非効率性を生み出しているとの批判から、競争原理による民間活力の導入を求める動きが広がっている。また、国と地方の二重行政、紐付きの地方交付金による地域の実情に合わない政策を遂行しなければならないという問題なども顕在化してきている。

・地域の事情に即した事業への投資
・地域の資源を活かした活性化に役立つ事業への投資
・地域の自立意識の高揚、内発的に発展する社会
・社会的共通資本
・心豊かに暮らせる社会


4.重視される個人の権利

国や地方の政策、企業の利潤追求のための活動に依存してきた庶民自身の権利に対する意識が高まりつつある。

・人権(Human Rights)という概念の浸透
・性別や年齢に関係なく活躍できる社会
・個人情報の保護と知る権利の保護
・同一労働同一賃金
・雇用機会の均等、安心と安全


5.市民が自らの手で地域活性化をしていこうという様々な取り組み

地方への主権の移動、個人の意識の高まりは、競争原理による経済原理が生み出した様々な社会問題を地域に暮らす市民自身が解決していこうという動きを突き動かしつつある。



用語



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