創造的思考モデル Creative Thinking Model for Innovations

1. 社会変革はいかにして可能か

 ここでは、まず、「心の中で形成される意味」によって「社会変革はどのように可能であるのか」について考えていくことにします。なお、「社会」は単なる個人の集まりではなく、「共通に認識されている意味」によって形成される「概念上認知される存在(実在しないもの)」です。それは、組織の中にも、地域の中にも存在します。
 

 
 社会の変革は蓋然性によるところが大きく、定式化された法則や原理がある訳ではありません。そこには、ただ、人々の相互のコミュニケーションがあるだけで、そうしたコミュニケーションの行き交う流れの結果として、社会の中で自己生産的、かつ、再帰的に変革が起こってきます。

  1. グローバル化しインターネットでつながっている現代社会にとって、変革の起爆剤となるのは「メディア(ソーシャルメディアやマスメディア等)」の力です。ただ、インターネット以前の社会とは異なり、情報が一方的に多数の人々に流されるのではなく(マスメディア)、一人ひとりがツイートを書いたり、ブログを書いたりして、自らの意志や自ら持つその場で得た情報を社会に発信し、それが拡散し、そこでコミュニケーションが繰り広げられていきます(ソーシャルメディア)。また、論文もメディアを通して共有され、書籍もメディア上で売買されるようになってきています。
  2. この様にメディアを通して「社会の中での意味」が統制されることなく自律的に形成され、社会の中で共通に認識されていきます。また、組織の中でもメディアを通して意味が形成され、組織の中で共通に認識されていきます。これは地域の中でも同様に、地域内メディアを通して意味が形成され、地域の中で共通に認識されていきます。
  3. 「社会」と「個人」は、「社会の中で共通に認識されている意味」がメディアを介して個人(人)の脳によって「解釈」され、すなわち、「個人の意識」によって意味付けられた「個人の認識」として「心の中で形成される意味」が形成されるという関係となります。また、逆に、「心の中で形成される意味」が個人(人)の脳によってメディアに配信されて「社会の中で共通に認識されている意味」を形成していきます。

 このようにして「社会」と「個人」はメディアを通して相互にコミュニケーションされ、コミュニケーションの行き交う流れの結果として、社会の中で自己生産的、かつ、再帰的に変革が生まれていくことになります。なお、人々の中には権威を持った人がいて、そうした人が「メディア(ソーシャルメディアやマスメディア等)」を通して「社会の中で共通に認識されている意味」に大きな影響を与えていきます。

2. 創造的思考モデル Creative Thinking Model for Innovations の基本コンセプト

当創造的思考モデルは、上記「社会変革のストーリー」を想定し、経営者のビジョンや商品コンセプト等に込められた言葉から破壊的イノベーション(社会変革を巻き起こすイノベーション)へのストーリーを効率的に生成していく思考モデルです。

“創造的思考モデル” は、①インタレストーキーワードを入力とし、②イノベーションへの道筋と過程の道しるべ(イノベーションの様々な論点)であるキーワード(コロケーションキーワード)と親和性を評価し、③ Trigonal Thinking によってイノベーションの目的である 未来社会の発展の概略モデル をデザインします。そして、この 未来社会の発展の概略モデル に未来社会に向けた存在価値のある優位性があるか、社会的視点や市場的視点から精査しながらその骨格を煮詰めて(目的の構造化設計)、未来社会の価値を創造するシナリオ を描いていきます。

3. 目的の深層学習による未来社会の発展モデルのデザイン

  1. インタレストキーワード は、企業として実現したいこと、すなわち、事業の目的を表現したキーワードです。商品などの固有名詞ではなく、ビジョンの中で目的化していこうとしていること(目指していくイノベーションの目的) を言葉として表現した(単語を列挙した)ものです。
  2. この インタレストキーワード は、当社がイノベーションへの道筋と過程を描くために洗い出した108個の イノベーションの論点(イノベーションへの道しるべ)に関わるキーワード(および、コロケーションワード(キーワードや類義語に対して連語関係のある言葉))と比較され親和性(一致度)が評価されます。
  3. ここで、親和性を評価する108個のイノベーションの各論点は、相互に因果関係性とその影響の強さによって結びつけられており、“イノベーションへの道筋と過程を思考するネットワーク(思考のネットワーク)” を形成しています。イノベーションへの過程 は、①社会システムの進化、②社会的風土の変容、③プラットフォームの進化、④プロダクトの深化という、イノベーションが社会に普及していく過程を表しています。また、イノベーションへの道筋 は、①技術革新や様々な変革が、②社会を発展させ、③経済を成長させ、④社会的課題を解決に導き、⑤組織や人の行動を変化させ成長させていくというストーリーを描いています。この 思考のネットワーク を辿っていくことで、イノベーションへの道筋と過程を描いていくことができます。
  4. イノベーションの論点 と親和性の強い インタレストキーワード も、この 思考のネットワーク にマッピングされ、イノベーションへの道筋と過程へと紐づけられていきます。それは、すなわち、イノベーションの論点 と強い親和性を持つ インタレストキーワード の集合を創造していくことで “イノベーションへの道筋と過程” を描いていくことにもつながります。
  5. この インタレストキーワード の集合を創造していく思考は、未来社会の発展モデルをデザインしていく過程でもあります。このデザインのプロセスは、イノベーションの目的 を深掘りしていく思考プロセスに相当し、当社が独自に開発した思考方法である Trigonal Thinking によって進めて参ります。Trigonal Thinking は、表面的に狭く偏りがちになる思考を、広い視点で、多角的な視点で、思考を深めつつ、大局的に高い視点でものごとを考えていく思考の方法論です。
  6. Trigonal Thinking により インタレストキーワード の集合を創造し、イノベーションの論点親和性を評価していくプロセスを何度も繰り返す (目的の深層学習) ことで、“イノベーションへの道筋と過程” を深掘りしていくことができ、最終的に出来上がるのが、企業が描き出した 未来社会の発展の概略モデル となります

4. 目的の構造化による未来社会の価値を創造するシナリオの作成

未来社会の発展の概略モデル は、それだけでは、自己の “想い” を描いただけの亡羊としたものだけに過ぎず、そこからさらに 現実的な未来社会の発展モデル へと精査していく必要があります。

  1. 目的の構造化設計 は、未来社会の発展の概略モデル (イノベーションの目的) から更に、[それは、何のために “Why” ]-[何を、行うのか “What” ] を深掘りしていく思考プロセスです。一般に、目的を掘り下げていくには、①理想像(こんな未来社会にしたい)、②因果関係(の問題の原因を解決してこうなるようにしたい)、③類型(他の事例でうまくいっていることを取り入れたい)に思考を巡らせることになります。目的の構造化 では、そうした思考を巡らせながら[それは、何のために “Why” ]-[何を、行うのか “What” ]をブレークダウンしていくことになります。
  2. 目的のブレークダウンは、その目的を詳細化していくことでもなければ、目的を正規化して断片化していくことでもありません。むしろ、全体の目的を メタ思考 により深掘りして メタファーとデフォルメ によって羅列し記述いくことであると言えます。
  3. また、巡らせる思考にも根拠が必要であり、未来社会の発展の概略モデル が、本当に、未来社会に向けて有意性のあることなのか、未来社会にとって存在価値があるのか、自分の価値観を押しつけではなく自己のエゴを超越した偏りのない普遍的な思考となっているのかといったことを見極めなければなりません。この段階での思考には、アウフヘーベンとロジカルシンキングの二通りあります。
  4. アウフヘーベンは、ブレークダウンしていく段階で浮かび上がってきた 現実的な未来社会の発展モデル の中に相互に矛盾することがあっても否定せず、最終的には全体として統合しながら 目的 の達成を目指していく思考です。
  5. ロジカルシンキングは、データに基づいて予測されうる未来社会から、 現実的な未来社会の発展モデル について検証していく思考です。事業領域に関わる社会学の知識、経済学の知識、心理学の知識、経営学知識を援用しながら、展開すべき事業領域、製品仕様の市場性、実現する社会的価値とその訴求効果(プロモーション効果)について 現実的な未来社会の発展モデル の妥当性(未来社会に向けた存在価値のある優位性)を検証することになります。
  6. こうして 目的の構造化設計 により思考した結果をフィードバックしていくことで 未来社会の発展の概略モデル現実的な未来社会の発展モデル へと精査され完成度が高まっていきます。そして、最終的にはその眼目と骨格が煮詰まり、イノベーションへの道筋と過程 に基づいた 未来社会の価値を創造するシナリオ が出来上がります。

5. イノベーションへの道筋と過程と目的の深層を分析する思考過程例

下図「イノベーションへの道筋と過程と目的の深層を分析する思考過程例」は、自動運転技術の視点からの思考モデル例です。一般的に、この分野の技術は、それ自体がイノベーションとして捉えられています。しかし、単に、製品としての自動運転自動車の開発ということだけでなく、社会的課題の解決、将来のモビリティの変化やモータリゼーション文化の変容、あるいは、経済環境や社会環境の変化を踏まえた社会システムのリエンジニアリング(再構築)の下に、交通システムの全体最適を目的とした無人運転自動車をイノベーションとして描かれていなければなりません。ここで、全体最適としているのは、本図の全体像を包括しているということですが、事業者の思いが込められたビジョン、すなわち、未来における社会的価値の創造というイノベーションへのストーリーが映し出されていなければなりません。

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