多様性/個性/一体性を実現するコミュニケーション

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ポストモダンの時代には多元主義の考え方が広がり多様性が重視されるようになった。人には夫々に個性があり、そうした夫々にある個性こそが多様性である。多様性が重視されるということは、自己の個性を受け容れ、他者の個性を受け容れることから始まる。そして、夫々の価値観や知識を主張しあうのではなく、また、コンセンサスやネゴシエーションや忖度ということでもなく、お互いの意志を尊重しながら、より良い結論を導き出していこうという相互の心遣いのある対話によって一体性が醸成されていく。このより良い結論を導き出していこうという相互の心遣いのある対話こそがコミュニケーションである。コミュニケーションが成り立つには、共通する知識や共感する思いと言った基盤が必要である。組織の中には最初からそうした基盤がある訳ではなく、組織心理学で言われるイナクトメントを通した意味形成の過程も必要である。 21世紀の社会は、ソーシャルネットワークが発達した社会であり、いつでも、どこでも、誰とでもつながり合っていくことができる社会である。しかし、そうした技術が、真の意味でのコミュニケーション、すなわち、より良い結論を導き出していこうという相互の心遣いのある対話を実現化する訳ではない。むしろ、短い文章で自己を主張し合うだけの言葉のやり取りしかできない文化を社会に根付かせ、コミュニケーションのできない人を育てることにもなってしまう。 未来社会の持続可能な発展のためには、技術革新による利便性の追求も必要であるが、人々が互いにコミュニケーションを図れる文化を醸成していくことの方が重要である。


【認識すべき課題】 (時代背景、社会問題と背景要因)

  1. 組織が成立する要素をバーナードは、①共通の目的をもっていること(組織目的)、②お互いに協力する意思をもっていること(貢献意欲)、③円滑なコミュニケーションが取れること(情報共有)としている。
  2. 実線コミュニティを主張しているウェンガーも、コミュニティを「あるテーマに関する関心や問題、熱意などを共有し、その分野の知識や技能を、持続的な相互交流を通じて深めていく人々の集団である」とし、その育成のための7原則として、①進化を前提とした設計を行う、②内部と外部それぞれの視点を取り入れる、③さまざまなレベルの参加を奨励する、④公と私それぞれのコミュニティ空間を作る、⑤価値に焦点を当てる、⑥親近感と刺激を組み合わせる、⑦コミュニティのリズムを生み出すとしている。
  3. 社会心理学から組織論を唱えているワイクも、「組織は組織に流れ込んでくるインプットや組織自身をさまざまな形でいつも意味づけている存在」「組織は、ある多義性を処理し、他の多義性を無視し、新たな多義性を創造している存在」「組織は、組織を通過する経験の流れと行為の流れを安定化しようとしている存在」としている。
  4. これらどの理論においても、組織が有効に活動するための根底にはコミュニケーションの存在がある。

【未来における社会的価値の創造】

  1. 企業が事業を通して社会的課題を解決していかなければならない社会にあって、多様な社会的課題を抱えている従業員同士が結びついてコミュニティを構築(ゲマインシャフト)して、経営組織と協働しながら、社会的課題を解決するアイデアを実現化し、新たな価値を創造していくためには、コミュニケーションの基盤が必要である。
  2. コミュニケーションによって、本当の意味での(単に雇用の多様性や昇進の多様性としてではなく)多様性と、組織の中にいる人達が一体性を持って活動することができる。
  3. コミュニケーションは、単に情報交換や意思疎通だけでなく、セレンディピティを生み出して新たな知恵の創出にもつながっていく。
  4. コミュニケーションによって生み出された知恵は、SECIモデルとしてさらに進化していくばかりではなく、また、単に生産性を高めるという改善のアイデアを生み出すばかりでなく、その人の創造性を高めていく。
  5. 創造性が高められた人は自己実現を目指し、さらには、自我(エゴ)から解放されて、自己の超越への欲求を満たすために思考を深めていく。
  6. 上意下達を納得させるための意思疎通やネゴしエーションとしてのコミュニケーションではなく、共感と協創のためのコミュニケーションとなっていかなければならない。


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