#76 AI(人工知能)をサステナブル経営に活かす (16) Abduction と serendipity

 閃きは、ひょんなことをきっかけとして生起されることがあり、こうすれば閃くことができるという定説めいたことはありません。既定の知識(真なる命題)がある訳でもなく(演繹的思考法)、先行する事例がある訳でもありません(帰納的思考法)。
 また、ある場合には、目的そのものも閃くことすらあり得ることです。しかし、目的がおぼろげのままでは、そのために何が出来ていなければならないかを導き出して、こうすれば上手くいくという仮説を創造することもできません(弁証法的思考)。

 そこで、当社では、一つの可能性として、①事実を客観的に見つめ続ける(すなわち、静的分析と動的分析、全体(マクロ)と個々(ミクロ)を捉える)こと、②定石として文書化された知識や経験知、個人や組織の中に蓄えられた暗黙知が刺激されて結びつくとによって、③何らかの閃きが生じて、④仮説が組み立てられていくという思考プロセスを、仮説創造(Abduction)の仕組みと考えて、SAF(Situational Analysis Formula)を提唱してきました。

 とは言え、何もないところから突如として素晴らしい閃きが起こるというものではなさそうです。そこには、何らかの問題意識があり、何らかの解決しようという意思がなければ、閃きは起こらず、あるいは、見過ごされてしまいます。
 セレンディピティという言葉があります。本冊子では、偶々ある刺激に出会う(知的な遭遇)ことで触発され、連鎖して探索や創造の行動が巻き起こされ、新たな発想が生み出されていくという思考プロセスであると考え、ビジネス知識ネットワーク(BKN:Business Knowledge Network)の仕組みを提示してきました。
内からの発想の転換を引き起こすためには、SAF(Situational Analysis Formula)とBKN(Business Knowledge network)の仕組みが両輪となって機能することが必要であると考えられます。

 社会心理学に「社会的ジレンマ問題」という用語があります。何かの問題に遭遇しても、「今すぐに何らかの手を打たなければ、我が身に不孝な出来事が降りかかる」「これまでと同様に何もしなくても、危害が及ばず済むだろう」と思えば、「何で私がやらなければならないのか」として、誰も何も行動を起こさなくなってしまいます。
 「茹で蛙現象」「縦割り組織の弊害」「既得権益への固執」は、全てこの「社会的ジレンマ問題」に起因すると言えるでしょう。
 人というものは内発的に動機付けられて行動するものですが、だからと言って、自らの強い意思で他人を説得して困難を乗り越えていけるだけのリーダーシップを持って行動できる人は多くはいません。
 だからこそ、自分以外の声として、社会の趨勢(ムーブメント)や顧客の声(VOC:Voice of Customer)に耳を傾けることが必要になります。そこで、当社のビジネス知識データベースには、「社会心理・組織心理・購買の深層心理/社会現象・行政施策/経済事象・経済政策/業界動向/トレンド・ムーブメント/景気(基調判断)/社会の変容/消費生活の変化」といった情報も検索できるようにデザインしてています。

 
※[経営][意思決定]等は[思考]という視点で捉えているという意味を持たせて、[ ]をつけて記しています。

サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一

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