#154 高度医療による長寿社会になる

 医療技術はどんどん進歩している。癌の早期発見方法も、治療方法も次々に開発されている。多くの難病についてもその発症のメカニズムの解析が進むことで治療方法の開発が進んでいる。

 超高齢社会になって医療費も増大し、社会保障費の財政負担が大きくなっている。プライマリバランスの悪化は国の危機でもあるばかりでなく、もし、経済大国である日本が財政破綻してしまったら、世界中で株価が暴落して巨額の経済価値が消失し、世界規模で景気は後退局面に陥り、多くの人達が職を失う。高度医療の発達は人類が叶えたいと願ってきたことであるが、高度医療による財政負担の増大の問題を解決しなければ、より多くの人たちの生活を犠牲にしてしまうことになる。

 自分のみならず、身内や親しい人が病に苦しんでいれば、何とか治療して元気になって欲しいと思う。個人で高度医療にかかる医療費を負担しきれなくても、保険の仕組みで賄うことができる様にすれば、助かる命を救うこともできる。そして、その人が職に復帰して社会に価値を生み出していくことができれば、そのためにかかった医療費は将来への投資でもある。

 未病段階で病気を予防し、あるいは、早期発見により治療を軽減することで医療費を安く抑えることができれば、社会全体としての財政負担が軽くなる。高度医療による治療方法の開発や創薬には莫大な資金が必要であり医療費はどんどん高騰していく。しかし、そうした高度医療も普及が進めば一人当たりの負担する医療費は安くなり財政負担も減る。コンピュータシミュレーションにより効果の見込める薬の成分をデザインすることで創薬にかかる期間を短縮しコストを低減することもできる。外科医ロボット、看護ロボット、病気監視ロボット等により医療現場の負担を軽減し、現場での人手不足問題を解消するとともに人件費を抑えることできる。

 高度医療により長寿社会を実現していくためには、①医療技術の進歩を喜ぶだけでなく、②医療技術を低価格で開発することのできる技術の開発を、経済原理を利かせてどの様に進めていくか、③社会全体として経済破綻をきたさない財政負担の方法になっているか(誰がどれだけの費用を負担するべきか、社会全体としてトータルコストバランスがどの様に図られているか、そのために、医療制度や規制がどの様に設計され機能しているか)、④医療に関するビジネスモデルが高度医療化と社会保障費の増大に喘ぐ超高齢化社会の安心できる暮らしを担いうる社会基盤となりうるかといった多面的な視点から、高度医療技術によって支えられる社会のあり様そのものを描いていかなければならない。

 医療は、衣食住と同等に、誰にとっても生きていくためには不可欠である。こうした技術革新と社会を支える仕組みが、医療業界のみならず社会全体が破綻することなく持続可能な最適解になっていく様に、誰もが自分の問題として関心を持って捉えていかなければ、長寿社会を安心して生きていくことはできない。

サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一

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