#138 トータルライフサイクルコストバランス 国と地域社会、企業、消費者が負担するコストバランスを図る

 日本経済は成熟化し、また、高度経済成長を支えてきた多くの産業は、グローバル化しオープン化されたボーダルスの低価格競争にさらされている。国や地方の財政も赤字国債に頼り切っており危機的な状況に瀕している。そうした中で、企業も自立しなければならないが、国や地方の財務支援に頼っている部分も多い。これからは、公共投資、補助金、助成金に頼らない自立した経営感覚を醸成することが必要である。

 日本の戦後の高度経済成長を支えた仕組みは、官主導の護送船団方式による産業の育成だった。一方、欧米先進国の経済成長を支えたのは投資家による投資であり、市場原理に基づいて成功を収めていく体験である。そして、幾度の経済摩擦の結果として、日本のこうした護送船団方式は解体され、欧米流の投資の仕組みと市場原理を是とする考え方の導入が進んでいった。

 官主導の護送船団方式による成功体験は今でも日本人の心の奥底に残っている。先進的な事業に対しては、国家戦略として多くの資金が補助金として投入され、中小企業の研究開発や市場開拓に対しても、国は自治体の支援事業として税金が投入され続けている。また、こうした補助金や助成金をできる限り確実により多くの額を受けるためには、行政手続きに対するノウハウも必要となり、そうしたノウハウを提供するコンサルティングサービスもビジネスとして形成されるに至っている。

 しかし、国や地方自治体の財政難の状況にあって、企業は自立しなければならない。米国等の様に軍事産業に関わる研究開発に巨額の予算が投入される訳ではなく、日本は平和国家であり民間分野での新産業の育成が必要である。一企業の一事業の成功だけを考えていては日本の未来は暗い。経済成長を支えるだけの力を持ちうるのは、ディスラプティブ・イノベーションであり、企業は独自の経営努力で知恵を絞り、イノベーションを興す思考から新事業の種を大きく育てていかなければならないのである。

サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一

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