#117 イノベーションを興す働き方への改革

 未来社会における働き方は、詰まるところ、イノベーションに関わる仕事に従事する働き方になる。イノベーションに関わる働き方は、色々な人の考え方や価値観の多様性に視点を当てて、一つの目的(ビジョンや当面の目的)の実現に向けて、多様な人たちを巻き込んでいく柔軟な仕組みにより実現されていく。それは、一人ひとりが多様(ダイバーシティ)な価値観やスキルを持つ専門家集団としての働き方と、理念やビジョンの下で一体性(インクルージョン)を持つ専門家集団としての働き方をあわせ持つ働き方であり、そうした働き方が調和して機能して組織のダイナミズムとしての相乗効果を生み出していく仕組みであるもある。
 これからの社会では多くの定型的な知的労働を人工知能(AI)が担うようになる。人間は、この定型的な知的労働から解放されて、時間をよりクリエイティブな仕事に集中できるようになる。それは、働く時間と場所を拘束されて働く対価としての給料を得る働き方からの解放でもある。
 企業にとっても、定型的な知的労働にかかる人件費の多くをイノベーションに関わる仕事に振り向けることができるようになる。また、シェアリングエコノミーの時代にマッチしたフリーランサーとしての働き方を積極的に導入することで、固定的にかかる人件費を変動費化(必要な時点で必要な分の労働力を使用する)できる。こうした取り組みは、成熟化した市場の下で事業を営む企業にとって、すなわち、大量生産・大量販売の事業モデルが通用しない時代において、労働稼働率を高め生産性を高める有効な施策になる。
 労働稼働率を高め生産性を高める働き方の一方で、心が休まり、心豊かな暮らしのできる余地を残した働き方をデザインすることも必要である。社会の多様性を体感しながら、未来社会における存在価値のあるビジョンを具体的にイメージして描き出し、経済性や合理性ばかりでなく「社会価値創造の競争」に勝ち抜く戦略を構想し、組織のダイナミズムとしての相乗効果を生み出していく働き方である。こうした働き方こそがこれからの社会にイノベーションを興していく働き方である。そして、こうした働き方に変えていくことこそが本来の「働き方改革」であるべきであろう。

サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一

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