#100 目的思考とメタ思考

 忙しい日々を過ごしていると、ついつい目的を見失ってしまう。そして、様々な局面でものごとを合理的に判断しようとして、演繹的思考や帰納的思考に陥ってしまう。しかも、まだるっこい話しはともかく、結論を問われることもある。ビジネスの世界では、常に結果が求められる。
 しかし、「#95 経営において論理思考が正しく機能するための条件」でも記した様に、論理思考には、「問題に対する捉え方の範囲や前提条件の設定」に問題が内包されている可能性がある。日々の様々な局面において正しいと思っていても、実は、論理思考にばかり頼ってしまうと、とんでもない方向に向かっていくことにもなってしまう。組織において、論理思考によって一つの方向が決まってしまうと、集団で道を誤ってしまう。
 世の中が多様に変化し、常に様々な状況が複雑に絡み合う中で、最も重視しなければならないことは「目的」である。錯綜する情報の海にあってブレずにまっすぐ進んでいくためには「目的」が見えていなければならない。そして、その目的が実現されるためには何が実現されていなければならないかを遡って考え、その遡っていく過程で今ある状況との乖離を把握してくと、そこに問題の認識が生まれる。多様な状況にあっては、目的から遡って考えるこの過程が重要である。
 ここで、最も大事な点があることを見過ごしてはならない。それは「目的」を「目の前に起きていることばかりに囚われて設定してはならない」ということである。「#97 イノベーションにつながる “目のつけどころの違い”」でも記した様に、問題認識にある欠落を取り除いていくためには、①目の前で見えてることだけでなく、②誰もが知っている先人が構築した知識を踏まえた上で、③社会に対する大義という個々の殻を打ち破って、④もっと大局的に社会システムの在り様におけるあるべき理想と今の事実との間に生じている矛盾に思考を掘り下げて考えていく必要がある。
 情報技術の世界では、“メタ” という言葉をしばしば用いる。“メタ” とは「高次の」とか「超越した」とかの意味があるが、「目的思考」と同時に「メタ思考」により、「目的」を上記①~④の思考を用いて、より高次に、より多様なものごとを広範に内包できるまでに超越したものとしていくことが必要である。

サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一

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