#24 見透せる化 (12) 人としての顧客との関係構築、人中心の思考から生み出される顧客満足

病気でひどく苦しんだ時に、医療機関で診てもらったらすぐに良くなった記憶は忘れない。途方に暮れた時に、親身になって手助けしてもらったことも、その場の情景とともにストーリーとして忘れない。私の経験であるが、30年も昔のこと、韓国旅行で、帰りの飛行機の時間に間に合うバスに乗れなかった時に、泊りもしなかったホテルのベルボーイが機転を利かせてシャトルバスに便乗させてくれて親切は、今でも忘れない。私にとって、最後の最後に受けた親切が深く心に刻まれ、韓国旅行の満足度は最高点である。
 
通常行われている顧客満足度調査では、例えば、一般消費者を対象としたアンケート形式による顧客満足度調査は、商品をどうして知ったか、どれくらい使っているか、他社商品と比べてどうか、価格は高いか安いか、継続して使う気になっているか、どれくらい満足しているか、要望等といった内容と、個人情報を除いた、性別、年台、大凡の職業といったプロフィールが主だろう。法人営業の場合は、もう少し商品に関する踏み込んだ質問、担当営業や会社の対応への満足度等も追加されるだろ。
 
これだけの質問内容でも、個々の質問に対する回答を度数分布で分析するだけでなく、クロス集計、相関分析、因子分析といった様々な視点から満足度要因(あるいは、不満の要因)をあぶり出して分析ことができ、更には、ターゲット客層に対する商品の適合性も調べることができる。また、薄く広いアンケート調査から特定の顧客を絞り込んで、エピソードも含めた体験調査を行うのも良いだろう。
あるB2Bの企業では、担当営業にとって自分の売上につながらないからという理由でモチベーションの上がらない顧客満足度調査を(アンケート調査)を、営業成績の評価と結び付けて実施率を高めたりもしていた。結果的には、コミュニケーションツールとして使えることを発見し、積極的に実施するようにもなった。
 
しかし、顧客の目線で考えるきっかけにするという本来の顧客満足度の調査の目的から外れているのではないだろうか。商品やサービスの妥当性を実証するだけの意識だったり、販促や営業活動の効果測定だったり、営業成績の評価だったりでは、供給者側としての立場に視座した視点での調査にしかならない。
 
大事なことの第一段目は、顧客の目線で、求められていた利便性や効果が何だったのか、そしてそれは体現できているのかを知ることは、顧客が満足を得るための当たり前の品質(条件)だろう。
 
顧客満足にとって大事なことの第二段目は、顧客の生活の仕方、仕事の仕方への関与の度合いと質という視座に立つということ、そしてその視点で顧客満足を捉えることである。冒頭で記したように、本当に困った時に親身になって解決したかどうかで、顧客と一生のお付き合いができるかが決まる。
 
顧客満足にとって大事なことの第三段目は、より深い、真の人としての顧客との関係構築、人中心の思考からの顧客満足である。顧客としてというよりも、一人の人としての生活や仕事の空間と時間を観じて共感し、言われたこと以上の心遣いにより、その先にある、真に「やりたいこと」「やらずにいられないこと」を実現させることでの満足を得てもらうことである。ストーリー性も必要であり、ある程度の演出も必要であろう。顧客満足のプロデュースである。そしてその本質は、顧客も我々の一人ひとりも社会の一員であり、社会の持続可能な発展に貢献しうるかという視点である。その視点がなければ、真に信頼による関係性は構築できないし、本当の意味での顧客満足は得られない。
 
社会の持続可能な発展というと、ものすごく遠いところの話しに聞こえるかもしれないが、効率向上による生産性向上やコストダウンだけでなく、身近な問題として、環境に対する心遣い、安全・安心はもとより、そこで暮らしている人達や働いている人達への心遣いがあってこそ、信頼が生まれ、そこから真の人としての顧客との関係構築、人中心の思考が生まれ、真の顧客満足につながる。
 

サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役 池邊純一

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)